12月の聖書タイム「砕かれた神の子、そして砕かれた人々」
by 山形優子フットマン
山形優子フットマンの執筆・翻訳 by 「いのちのことば社」
新刊「季節を彩るこころの食卓 ― 英国伝統の家庭料理レシピ」
翻訳本：
「マイケル・チャン勝利の秘訣」マイク・ヨーキー著
「コロナウィルス禍の世界で、神はどこにいるのか」ジョン・C・レノックス著
「とっても うれしいイースター」T・ソーンボロー原作
「おこりんぼうのヨナ」T・ソーンボロー原作
「ひとりのみどりごがわたしたちのために生れた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、『驚くべき指導者、力ある神 永遠の父、平和の君』と唱えられる。」ーーーイザヤ書９：５
冒頭の聖句はキリスト誕生より約７００年ほど前に南ユダにつかわされたイザヤという預言者によるものです。キリストの誕生が、そんな気の遠くなるほどの大昔に預言されていたなんて実に驚きです。その上、キリストには、ものすごく権威ある名前が４つもあるのも、びっくりです。
１、驚くべき指導者 ２、力ある神 ３、永遠の父 ４、平和の君。スーパーマンよりすごい４つの偉大な名前を持つキリストなのに、みなさんもご存知、この赤ん坊が生まれたのは厩でした。キリストの誕生シーンは世界中の芸術家が描き、ロンドンのナショナルギャラリーにも有名な絵画が何点もあります。クリスマスと言えばその光景がロマンチックな様相として定着していますが、よくよく考えると、新生児を厩の飼い葉桶に寝かせるなんて、この上なく不潔で今の日本だったら言語道断です。
厩の汚さは私も知っています。娘たちが小さかった頃、乗馬に夢中になった時期があり、たまに厩の掃除を手伝うハメに。中は薄暗く寒く床には藁が一面、馬が横になった時のためでもありますが、藁は馬糞撤去に便利だからです。餌用の干し草が、なんとなくまだ薄緑色で青草の匂いを放ちます。馬は時折オケに頭を突っ込んでは、むしゃむしゃ。厩は干し草と馬糞と尿が混じった動物臭い場所で、清潔という言葉とは無関係です。しかも厩の前は馬の足に都合が良いように、ぐちゃぐちゃの泥のぬかるみという具合です。
こんな不潔な厩の飼い葉桶に、偉大なる神の子が、自分では何もできない赤ちゃんの姿に、わざわざなり下がり、すやすやと眠っています。豪華とはほど遠い厩と、偉大なる４つの名前はどう繋がるのでしょう？「驚くべき指導者」、「力ある神」。「永遠の父」、これらの名前は揺るがない権威を形容するもので、永久平和の源として「平和の君」を裏打ちするものとは想像はできても、どうもピント来ません。わかるのは、「神の平和」が人間の平和とは異なるだろうということだけ。
まずは人間の平和を点検。今、世界中のあちこちに戦禍が起こり、この世のいわゆる「平和」が、いかに脆弱で簡単に崩されるものかをニュース報道を通し、いやというほど見せつけられています。さて、力づくの支配者たちの中に、厩で産声をあげた誕生経緯を持つ者はいるでしょうか？
神の平和とは、神の子が砕かれた上に築かれたものではないでしょうか。神の子なのに、わざわざ汚い厩という底辺にまで下り産声を上げ、順調に育ったと思ったら今度はローマの極悪人の最悪の処刑である十字架で殺されるーーーつまり神の平和とは「神が人のために何度も砕かれて下さったが故に勝ち得たもの」ではないでしょうか？そう、確かにキリストは私たちのために何度も砕かれました。神の平和は、この世の測りでは一見、か弱く小さく貧しく、わかりにくい。そして酷い十字架が私たちに救いをもたらすという恵も、わかりにくいものです。
ここで新約聖書マタイによる福音書５章５～１０のキリストの有名な山上の垂訓を見てみましょう。
「心の貧しい人々は幸いである。天の国はその人たちのものである。
悲しむ人々は、幸いである。その人たちは慰められる。
柔和な人々は、幸いである。その人たちは地を受け継ぐ。
義に飢え渇く人々は幸いである。その人たちは満たされる。
憐れみ深い人々は幸いである。その人たちは憐れみを受ける。
心の清い人々は幸いである。その人たちは神を見る。
平和を実現する人々は幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。
義のために迫害される人々は、幸いである。天の国はその人たちのものである。」
これも謎といえば謎、わかりにくいです。けれども山上の垂訓に書かれているのは「砕かれたもの」の心の状態です。これらの「人々」とは、とことん砕かれ、その自我がとことん打たれた者のことです。あなたの心がそういう状態になって、はじめて、あなたは幸いな者になります。そして「驚くべき指導者」、「力ある神」、「永遠の父」、「平和の君」が身近な家族のように感じれる人々になります。それは、寒々しい夜、貧しい場所で、愛らしいパーフェクトな新生児を胸の中に、しっかりと抱かせてもらえるような大いなる喜びです。
この世のしがらみや価値観、お金が支配する世の中で今、挫かれたあなたの心が、貧しく、悲しんでいて、柔和で義に飢え渇いて、憐れみ深く、心が清いなら。そして平和を実現し、義のために迫害されているなら、このクリスマス、キリストはあなたに報いてくださいます。あなたが、少しでも神の子のように砕かれるなら、あなたは平和を手に入れることができます。それは恵と救いという豊かなプレゼントです。
「わたしは信じます 命あるものの地で
主の恵を見ることを。主を待ち望め
雄々しくあれ、心を強くせよ。
主を待ち望め。」ーーー詩篇２７：１４
イザヤ書には次のようにも書かれています。
「闇の中を歩む民は、大いなる光を見、
死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。
あなたは深い喜びと 大きな楽しみをお与えになり 人々は御前に喜び祝った。
刈り入れの時を祝うように 戦利品を分け合って楽しむように。彼らの負う軛（くびき）、肩を打つ杖、虐げる者の鞭を あなたはミディアンの日のように追ってくださった。地を踏み鳴らした兵士の靴、血にまみれた軍服はことごとく火に投げ込まれ、焼き尽くされた。」ーーーイザヤ書９：１～４
待ちに待ったみどりこを抱かせてもらえるような安らぎこそ、主の平和を手に入れることです。
今年も１年間、ありがとうございました。
みなさんが恵豊かなクリスマスと新年を迎えられること、心よりお祈り申し上げます。
「このように、わたしたちは信仰によって義とされたのだから、わたしたちの主イエス・キリストによって神との間に平和を得ており、このキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる希望を誇りにしています。そればかりでなく、苦難をも誇りにしています。わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。希望はわたしたちを欺くことがありません。わたしたちに与えられた聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからです。」ーーーローマ人への手紙５：１～５
Merry Christmas and A Happy New Year!
