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Core i5-12600KFのOC備忘録


はじめに

  • intel CPU の OC(オーバークロック)をすると保証が切れます

  • CPUの劣化が早まります

  • 最悪、CPUが壊れます

  • 全ては自己責任で行ってください


大雑把な方針

  1. とにかく冷やす

  2. CPUコアの周波数を上げる

  3. CPUコアの電圧を上げる


1. とにかく冷やす

まずはCPUです。
拙者は空冷CPUクーラーを使ってますが、水漏れリスクを承知のうえであれば、大型の簡易水冷CPUクーラーのほうが冷えると思います。
ただ、高回転・大風量・高静圧ファンに変えたツインタワー型空冷CPUクーラーであれば、安い簡易水冷より冷えると思います。
拙者が使ってるのは、↓コレのファンを交換したものです。

意外と忘れがちなのが、ケースです。
YouTubeでは「まな板」と呼ばれるオープンフレームの検証台が使われる事が多いですが、普段使いのPCだとケースに入ってます。
ケースに入れたまま限界までOCすると、熱がこもって10℃くらい高くなってしまいます。
一発の記録だけを追及したい場合、前面・側面ガラスは外しましょう。

あとは、VRM(CPUの周りに付いてる電源関連)です。
これに関しては、ケース側面を外して、サーキュレーター(扇風機でも可)で強引に風を当てるのが一番手っ取り早いです。 これだけでも確実に温度を抑えられます。

そして、最も大事な事…室温です。
室温が30℃オーバーとかだと、明確にOC許容範囲が狭まります。
チャレンジの際にはクーラーで室温をガンガン冷やしましょう。
(できれば20℃以下。風邪を引かないように注意しましょう)

2. CPUコアの周波数を上げる

BIOSもしくは「Intel Extreme Tuning Utility (XTU)」を使い、「倍率(Ratio)」を上げていきます。

数字「1」が「100MHz(=0.1GHz)」なので、例えば12600KFのデフォルト上限値である「4.9GHz」だと「49」という設定になります。
この値を上げる事でCPUの処理速度が上がります。 これがOCの基本です。

なお、intelCPUの場合、スペック以上の周波数を出すには(基本的に)以下の制約があります。

  • マザーボードが「Z」で始まる型番(チップセットがZ系)

  • CPU型番末尾に「K」が付いているもの(K, KF, KS)

    • 「X」という型番もあるそうです(最近のには無いのかも)

Core 13,14世代は色々あったので、OCには推奨しません。
(意味わからなければ、「intel raptor lake 問題」でググってください)

拙者が使っている「i5-12600KF」というのは、リーズナブルで扱いやすく、前述の問題も無いと思われるので、OC初心者向き(※拙者含む)ではないかと思います。

購入当時は3万弱でしたが、2024年秋時点で、次世代CPU発売に伴う投げ売りと円高振れで、もう少しお安くなっているようです。 意外と狙い目かと思います。
仮にOCしなくても、普段使いの性能としては十分過ぎるので良いCPUです。(12400あたりでも良い気もしますが…今回はOCの記事なので12600Kで)


3. CPUコアの電圧を上げる

「電圧(Voltage)」を上げます。
電圧を上げることによるメリットとデメリットを(拙者が把握している範囲で)記載します。

  • メリット

    • 高周波数で動かした際の動作が安定する

  • デメリット

    • 発熱が増える

      • 発熱が限界を超えると「サーマルスロットリング」が発動する
        (安全装置。熱が下がるまで強制的に周波数を下げる

    • CPUの劣化が早まる

      • 気になる方は「エレクトロマイグレーション」でググってください

上記のメリット・デメリットを頭に入れつつ、周波数も含めてバランスの良い設定を探していくのがOCの醍醐味だと思います。



BIOS側の設定

ASRock Z790 PG Lightning/D4 の場合(Advanced Mode)
※他にも変更項目があるかもしれませんが、憶えている箇所のみ列挙
※特記の無い場合、2024/10/14時点の設定です

OCツール

  • CPU Cooler Type

    • 360mm-420mmラジエーターモデル

      • 実際に使ってる冷却システムに依らず、限界を引き出すために設定

  • CPU設定

    • P-Core レシオ

      • すべてのコア→49

    • E-Core レシオ

      • すべてのコア→42

        • これらは実際のOCには無関係?と思われるが、通常使用時の安定設定

        • 我が家の場合、E-Coreは42が上限(43以上は起動しない)

    • Boot Performance Mode

      • Max Non-Turbo Performance

        • Turbo Performance という項目もあって、そっちのほうが速そうなんですが…Turboにするとサーマルスロットリングが頻発するので、Max Non-Turboのほうが扱いやすいです

    • Ring Core Ratio Offset

      • 有効

        • コア毎の周波数を変えられる設定?

    • FLL Overclocking Mode

      • 有効

      • ModeSelectに「1」(半角数字を入れる)

        • Ratio(コア周波数倍率)のみのOCモードにする

    • Undervolt Protection

      • 無効

        • 電圧に負値を設定できるモードにする

        • OCの逆で、電圧を下げてワッパを良くしたい場合に使います

          • あるいは、特定のコアだけ高温回避目的で電圧を下げるとか

    • Intel Thermal Velocity Boot Ratio Clipping

      • 無効

        • 温度上昇で周波数を下げる機能を無効化?

    • CPU Tj Max

      • 109

        • サーマルスロットリングの閾値を変える

          • ここを上げることで、Cinebench中の周波数低下を抑制

        • CPUが壊れる可能性があるので、個人的には変えないことを推奨
          (デフォルトは100℃)

    • CPU Power Limit

      • Lock

        • ここが恐らくCPU安全装置の最終防衛ライン

        • Unlockすれば性能上昇が期待できる反面、CPU故障の可能性も高まるので、個人的にはLock推奨

  • 電圧設定

    • 電圧モード

      • OCモード

    • CPUロードラインキャリブレーション(LLC)

      • レベル5→レベル4(2024/10/29更新)

        • 説明を読むと、値が小さいほうがOCに適している的な事が書いてありますが、温度上昇等がピーキーになって初心者には扱いづらいので、まずはLv5にして調整したほうがやりやすいと思います

      • LLCを下げた場合の挙動は以下のとおり(2024/10/29追記)

        • 負荷が高い場合に電圧を盛る

          • これにより、高負荷時の動作が安定する

        • 温度が上がるため、サーマルスロットリングが起きやすい

          • LLCをいじった場合、高温のコアは個別に電圧を下げる必要があるかも

        • 高負荷(高クロックマルチコア)の安定動作とサーマルスロットリングのトレードオフで、適切な値を探す

アドバンスド

  • CPU設定

    • CPU Cステートサポート

      • 無効

        • 省電力関連の設定らしい
          OC時には邪魔になるのでOFF

        • OC以外の通常使用ではむしろON推奨(電力消費を抑えられる)

    • Intel AVX/AVX2

      • 有効

    • Intel バーチャライゼーションテクノロジー

      • 無効

        • 有効にすると何等かのリソースを喰う?

      • VR関連?を使う場合は有効にする必要あり?



Intel XTUの設定

※特記の無い場合、2024/10/14時点の設定です

持っていない場合、ここからダウンロード、インストールしましょう。
スタートメニューの「Intel(R) Extreme Tuning Utility」から起動します。

OC設定をBIOSでいじると、設定失敗時の状況によってはCMOSクリアが必須になりますが、XTUだとPC再起動で設定リセットが掛かるので、よりカジュアルに色々な設定が試せるのが魅力です。

基本的な使い方

  • Advanced Tuning で詳細パラメータをいじれます

    • 最初にクリックした際、「補償は切れるし、寿命も縮むけどそれでいいのかい?」的なダイアログが出るので、納得したうえで「I agree」を押すと、編集画面が出てきます

    • パラメータをいじった後、左下の黄ボタン「Apply」で設定反映します

    • 右下「Save」を押下すると、名前を付けてパラメータを保存できます

      • 後述「Profiles」に記録されます

      • 試行中の設定を都度記録しておくことで、OC失敗→再起動時のパラメータ再設定の手間が省けます。 是非使いましょう。

  • Speed Optimizerで、簡易自動OCができるようです。

    • 性能向上は安全範囲内なのでさほど高くは無い印象

  • Benchmarking で、簡易ベンチマークが取れます

    • 出る値にブレが大きいので、あまり信用できないかも…

    • どちらかというと、ベンチ中の周波数・温度変化・サーマルスロットリング有無を見て、パラメータ設定の参考にする用途が多いかも

  • Profiles

    • 名前を付けて保存したXTUパラメータ一覧が表示されます

    • 上記パラメータを呼び出して再設定(上書き)できます

      • パラメータ呼び出し方法は以下のとおりです。

        • 1. 呼び出すパラメータ行を選択

        • 2. 左上「Show Values」を押下

          • これをやらないと、下記「Apply」が押せない

        • 3. 左下黄ボタン「Apply」押下

          • これで Advanced Tuning に保存した情報が反映される

  • 縦長ディスプレイでウインドウサイズが崩れ、右側項目が隠れた場合

    • タイトルバー部分をダブルクリック2回でウインドウ最大化に戻ります

      • 明らかにバグなので直して欲しい…

OC設定の主要項目

  • AVX2 Ratio Offset

    • 最大(拙者の環境だと「31.0x」)に設定

    • 説明には「negative offset」とあるので、値が大きいほど下がります

    • この値を大きくすることで、CPU発熱を大幅に抑制できます

      • 但し、これだけではCinebenchのスコアが下がります

      • これを安定化させるために、CPUの電圧を上げます

  • Core Voltage Offset

    • 0.060V

      • CPU全体の電圧を底上げします

      • これが適正値かは不明(もう少し詰める余地がありそう)

        • 低すぎるとCinebenchが完走しません(不安定)

        • 高すぎるとサーマルスロットリングが発動します

      • Pコア毎に電圧を変えると「Multiple」になります(後述)

  • Turbo Boost Short Power Max Enable

    • Disable

      • 常に最大設定で動かすため

  • Turbo Boost Power Max

    • 270.000W

      • 仮の値。実際はここまで上がる事は無いと思います

      • 恐らく、BIOSの電圧調整に絡む場所な気がするので、低すぎるとリミッタが掛かると思います。(が、大きすぎてもマズい予感…)

  • Turbo Boost Power Time Window

    • 128.00seconds

      • 最大値

      • ShortPowerMaxを無効化してるのであまり関係ない気もしますが一応。

  • Performance Active-Core Tuning

    • 1-2 Cores(2024/10/29更新)

      • 58x

    • 3-4 Cores

      • 55x

    • 5Cores

      • 54x

    • 6Cores

      • 53x

        • コア同時使用数毎の最大周波数

        • Cinebench Multi では全コアぶん廻すので、ほぼ53xで動作

        • コア個別で53x未満が設定されている場合、そのコアは53x未満の設定最大倍率で廻る

          • サーマルスロットリング発生時は、一時的にこれらの設定値未満の周波数で廻る

  • Efficient Active-Core Tuning

    • すべて42x

      • 我が家の石では、これ以上で廻すのは不可能だった

  • Performance Per-Core Tuning(2024/10/29更新)

    • ※以下はCPUの個体差があります。拙者の石の場合の値です。

    • P-Core 3,5

      • 52x

      • Voltage Offset

        • P3: 0.015V

          • 一番発熱が高いコアなので、電圧を下げる

        • P5: 0.050V

          • P3ほど発熱しないものの、発熱高めなので電圧低めに

        • 発熱の高いコアは、発熱を抑えるために周波数を少し下げる

        • LLCを下げれば、発熱見合いで53xまで上げられる可能性

          • 現時点では、52xが限界…各パラメータを詰める余地は有り

    • P-Core 0,2

      • 53x

      • Voltage Offset

        • P0: 0.065V

          • P0は電圧を上げないと53xでCinebenchが廻らない

        • P2: 0.050V

          • P2は発熱防止の目的で少し下げた

    • P-Core 1,4

      • 58x

      • Voltage Offset: 0.065V(電圧高め)

        • 我が家の石の場合、P-Core 1,4 が優秀?で、最大でブン廻しても温度が5-10℃低いので、高めの周波数にしてます。

      • 最大スコア記録時の設定値「53x」にしていますが、Performance Active-Core Tuning の 6Cores 値より大きい値を一部のコアに設定すると、Cinebenchのマルチスコアが微増することがあります。

        • Cinebenchマルチとはいえ、同時に全コアを動かすわけではなさそうなので、描画開始時に速いコアが一瞬スコアを上げる事がある模様(=恐らく無意味ではない)

        • 但し、他コアとのバランスで、逆にスコアが下がる場合もあるので一長一短…

  • Efficient Per-Core Tuning

    • すべて42x

      • 拙者の環境での限界値と思われる

  • Processor Cache Ratio

    • 49x

      • 50xで少し性能が上がるが不安定、51x以上は途中で落ちる感じ…

XTUの設定値(2024/10/29版)



ベンチマーク前の準備

  • 常駐ソフトを可能な限り落とす

    • Cinebench中に常駐ソフトの割り込みが掛かると、スコアが落ちる or 挙動不安定になるため

    • 左下タスクトレイから右クリックして「終了」「Exit」等を選択

  • バックグラウンドサービスで、止められそうなものは止める

    • Ctrl+Shift+Esc でタスクマネージャーが起動します

    • タスクトレイ非表示アプリがあれば、右クリック→終了

    • 「サービス」を選択し、「状態=実行中」で、明らかに不要なものは終了する

  • Intel XTUを終了させる

    • XTU右上の「×」だけだと、タスクトレイに残ってます

    • 水色アイコンを右クリック→Exitで完全終了させます

      • XTU のテレメトリとCinebenchがバッティングして、スコア低下やフリーズの原因となる模様

    • XTUを終了させても、設定したパラメータは残っています

  • Windows Update に注意

    • 毎月上旬(10日前後)は、裏でWindows Updateパッチのダウンロードが強制的に走っている場合があります。

    • この時期にOCする場合、明らかにスコアが低ければ、先にWindowsの「設定」からWindows Updateのチェックを行い、ダウンロード→インストールまで終わらせておきましょう。

  • USBデバイス・ケーブル等は極力抜く(2024/10/29追加)

    • 余計なデバイスドライバを動かさない

    • 余計な消費電力を極力抑える



Cinebench R23(ベンチマークソフト)

CPU性能指標となる代表的なベンチマークです。
Microsoft Store にて無料で入手できるので、無ければ入れておきましょう。

デフォルトは10分モードです。
(10分過ぎるまでCPU描画ルーチンを廻し続ける)
これ以外に、1周だけ廻すモードもあります。
拙者は基本的に10分モードを使って計測しています。
(1周廻っても、10分廻すと途中でフリーズするとかスコアが落ちるとかあるので)

CPU (Multi Core)、もしくは CPU (Single Core) 横の「Start」押下で計測開始します。 MultiはCPUの全コアに負荷を掛けるモード、Singleは少数のコアにだけ負荷を掛けるモードです。(※Singleといいつつ、中で処理分散されるようで、実際には2-3コアくらい同時に動いてる印象)

実際に、Multiで出た記録を以下に貼っておきます。
すっぴんだと17312なので、3000以上スコアが上がってますね。(約1.2倍)

2024/10/29時点でのMulti最高記録(20659)



OC や ら な い か

というわけで、ハイエンドCPUのOCとか、液体窒素レベルで冷やすOCは情報が出てくるものの、意外とこういうミドルCPUのOC情報って出てこないので、備忘録として纏めてみました。(どちらかというと、自分で見返す用ですが)

最初に書いたとおり、「保証が切れる」「CPUの寿命が縮む(最悪壊れる)」ことから、誰にでも勧められるものではありませんが、折角の高性能CPUを持て余しているのであれば、こういうのに挑戦してみるのも面白いとは思います。

その際の情報の一助となれば幸いです。

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