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Death's Door【感想レビュー】※ネタバレなし

 『Death's Door』はAcid Nerve制作の見下ろし型アクションアドベンチャー。
 プレイヤーは死神カラスとなり、奪われた魂を取り戻すために奔走する。

 主人公は「リーパー」と呼ばれる、魂を刈り取ることを職務とするカラスだ。
 ある日、何者かによって刈り取った魂(ソウル)を奪われてしまったところから物語は始まる。


≫ダークでコミカルな世界観

 良かったのはなんといっても世界観。
 魂を刈り取るという死神の仕事が「業務化」されていて、どこか退廃的な世界の中にはサラリーマンの哀愁が漂っている。それどころか、主人公であるカラスの所属するリーパー協会はあちこちに閉鎖された区域が点在し、オフィスそのものも色彩を失ったかのようだ。
 既に限界感が漂っている。

ブラック企業か?

 しかし限界なのは見た目だけでなく、この世界そのものに限界が近いと次第にわかってくる。

 この世界には常に死が漂っている。
 だが、そこに生きるキャラクターや風景はどこかコミカルで可愛らしい
 やばいくらいタイプライターに全力を捧げている同僚や、ツボの魔女に頭をナベにされてしまった自称ハンサム、死なない墓守など、みな全力で独特の感性を持っている。ボスもあわせてみんな憎めないキャラばかりだ。

 キャラクターの総数は決して多くはないのだが、それでもゲーム進行ごとに言うことの変わる彼らについつい話しかけてしまうことになる。
 コミカルなやりとりの中で、じんわりとにじみ出てくるシリアスさが好きな奴にはたまらないだろう。

絵本のような不思議な場所も。

 彼らと出会い、敵を狩り、不運な死神カラスの奪われたソウルを取り戻す旅はやがて、「死神の扉」の真実にたどり着くことになる。


≫物悲しくも滾る曲

 そしてもうひとつ、欠かせないのが音楽。
 時にはコミカルに、そして当然ボス戦では盛り上げてくれるゲーム音楽。これもまたステージごとに違った雰囲気をまとう。ステージによっては太古を思わせる曲風になったり、メインダンジョンから繋がっているにもかかわらず、まったく違う世界を冒険しているような気分になる。
 しかし、その根本にはどこか物悲しさが漂う
 これもやはり、死のまとうシリアスさが巧妙に隠されている要因と言っていいだろう。


≫シンプルなアクションと広がる世界

 基本操作もそれほど多くない。
 攻撃と回避、そして弓矢などの遠距離攻撃だけだ。遠距離攻撃も切り替え型で、複雑な操作を必要としない。

 最初は持っているのも弓矢だけ。しかしゲーム進行に従い、炎の呪文やフックショットなどが入手できる。
 行けなかった場所へ行けるようになるのも醍醐味だ。
 時には思いもよらぬ場所へ行けることも。


≫ダンジョンといえば謎解き

 ダンジョン内では、敵を蹴散らし、仕掛けを解いて「扉」との近道を作っていくことになる。そのため、アクションが苦手でも少しずつ先へと進める作りになったいる。敵に負けてしまっても直前の扉からすぐにやり直しが効くので、うっかりセーブし忘れていても大丈夫だ。

  謎解きといってもスイッチを入れるものがほとんどで、パズル要素はほとんどない。ステージギミック自体も、意外に「ここ、後で通れるようになりそうだな」という所がすぐに理解できる作りになっている。
 最初にステージの進み方を見つければなんということはない。
 手に入れた呪文を次のステージで全力で使うという、アクションゲームの基本みたいなところもちゃんとおさえている。
 たまに素早い動作を要求されるところもあるが、こちらも何度もやっていればクリアできるだろう。


≫良かった所

 最初にも述べたが、世界観やキャラクターが可愛らしい。
 特筆しておきたいのが、翻訳がかなりしっかりしているところだ。キャラクターの語り口や名前からも、ユーモアや個性を感じられ、違和感なくプレイできる。しばらくやったあとに、確か海外ゲームだったはず……と一瞬思ってしまったくらいだ。
 文字も小さな画面でも結構見やすい。至れり尽くせりだ。

 あとは、ゲームオーバーになりやすいものの、ペナルティもなく再挑戦できるのは安心要素だった。高難度のアクションを求めている奴には少し物足りないかもしれないが、とっつきやすさはある。


≫気になった所

 意外に移動が面倒。
 全体地図がないので下手するとすぐに迷う。「後で来れそうだ」と思ったところや取り逃しがあった場所もすぐに見つからず、無駄に何往復もしてしまうことも。
 加えて、ヒントがやや不親切。何をすればいいのかすぐにはわからない謎解きもあったので、せめて何か言ってくれるキャラクターがいれば良かったんだが。
 逆にヒントをくれるキャラクターが優しく見えてくる……。

 短いわりに結構しっかりと作られている分、細かなバグや台詞の抜けがあるときは少し目立ってしまうかな。そう頻繁にあるものでもなかったが。


≫まとめ

 こういったゼルダライクと呼ばれる謎解きアクションは初プレイだった。
 いろいろと手こずりはしたし、難易度としてもけっして易しくはないかもしれん。だが、意外に初心者にもプレイしやすかったと思う。俺もほぼ初心者なのだが、なんだかんだクリアしてしまった。といっても、俺のクリア時間は20時間近くかかってるが。

 奪われたソウルを追い、死にゆく世界の秘密を探る、不運に巻き込まれたカラスの物語。
 手にとってみてはどうだろうか。

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魔術師ウィル@創作
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