新NISA、年360万投資法への誤解
■年360万投資法とは
新NISAの保有限度額はトータルで1,800万円である。そして1年の投資枠が360万円なので、360万円を5年投資することで最速で限度額まで投資するのが年360万投資法だ。よく見るのがeMAXIS Slim等の信託報酬が安価なインデックスファンドに一括投資する手法で、まるで「360万投資しないと損する」かのように焦りを感じさせる紹介動画もあるくらいだ。ただ、インデックスファンドに投資すること自体は良いが短期間で大きな資金を投入することは推奨できない。
■投資効率の影に潜むリスク
もし今後株価が上昇し続けるという保証が100%あるならば、この投資法が効率が良いことは間違いない。「いかに早く」「いかに多く」資金を市場に投入することが長期投資では大事だからだ。だがしかし、もしその前提が崩れた場合は大きなリスクがあることを軽視してはいけない。
■例え話
Aさんは2024年から全財産を投入して年360万を投資し2028年に限度額の1,800万円に到達しました。一方Bさんは無理のない範囲で年120万を積立投資していました。その後2029年にリーマンショック級の事件が発生し、株価が急激に下落しました。Aさんは急いで買い足そうとしますが資金が底をついているため、ただただ株価が元に戻るのを祈るしかなく夜も眠れない日々が続きました。その一方、Bさんは、まだ積立の途中だったので下落したおいしい価格で買うことができ、その後も老後まで長期的に投資を続け、結果として利益を出すことができました。
■ドルコスト平均法の掟
つまりはドルコスト平均法(=一定額を定期購入)で価格変動リスクを軽減できるということだが、重要なのは「やる以上は投資を続けなければいけない」ということだ。たとえNISAの限度額1,800万に到達しても、課税口座で投資をし続ける覚悟が必要であり、そうしなければドルコスト平均法のメリットを享受することができない。
■投資は無理のない範囲で
結論としては、「無理のない金額でコツコツ投資し続ける」という至極当たり前のことを徹底すればよい。極論を言えば年360万でもずっとそれを続けられる収入がある人なら問題はないということだ。人によってはそれが年60万円だったり120万円だったりするだけで、本質的には一緒だ。新NISAから投資を始める人もいると思うが、落ち着いて計画的な投資を行うことが肝要であると思う。
■余談
上では悪い例として書かれているAさんだが、過去の価格推移に基づいたシミュレーションを行うと、実は利益が出る結果となる。ただ、多くの含み損を抱えたまま何年も(何十年も)ホールドし続けられる人はそう居ないし、未来が同じ結果になる保障もない。それができるのは資金力に余裕がある人だけだと思う。ちなみに株価の動き次第でAさんもBさんも元本割れして損するパターンだってもちろんある。投資はギャンブルとは違うとは言うが、そういった不確実性を否定できない以上、ドルコスト平均法も決して万能ではない。あらゆるパターンを想定した上で、いくら投資するべきかを判断すべきだろう。