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ラジオショッピングで「一般の松前漬とは違う」と仰った増山様へ

増山さやか様は局長待遇のアナウンサーです。
ニッポン放送の現役アナでは当然最高位の
責任ある地位です。

ラジオショッピングは当然ながら
放送局の自社販売部門の商品を宣伝する


その放送原稿は
「しかるべき社員の目を通して確認済み」
のはずです・・・・が

「一般の松前漬」とは違う・・・
にはどんな意味があるのでしょう。

小生の母親は北海道松前町出身です。
従って現在でも多数の親類縁者が松前町におります。

子どものころは夏になると
毎年訪れた松前町
「海産物がたくさん獲れる」津軽海峡に面した松前港は
漁港として大変にぎわっておりました。

特産物はスルメイカとマグロや
ウニ・アワビ・・・・

子供のころは「それらの魚介類が高価なモノ」
だとは知らず・・・粗末に扱えるほど
「母親の田舎から届く海産物」は
我が家の食卓でいわしやさんまの様に
消費されていました。

小生の生地室蘭でも
ウニやアワビは普通に獲れました・・・・

そして毛ガニやホタテは地域の特産品で
今から50年以上前は
「それほど高価な食品でなかった・・・」

そのため
小生にとって高価な魚介類とは
「伊勢海老」や「鯛」「ハマチ」などのイメージが固定され
たまに飛行機で帰省した場合
千歳空港で販売されているカニやウニの値段をみて
「卒倒しそうになります」

皆さんが感じる1割から2割の価格が
「小生が感じる毛ガニの適正相場」です

小生が中学生頃までは
毛ガニや栗子ガニは春先なら・・・
「家の前の坂を下れば15分くらいで手に入る」
彼らは産卵前の時期
「室蘭市の祝津地区の岸壁」で軽トラにひかれたり
カラスにつつかれる存在でした。

岸壁に少し大きなタモともよべないような
虫取り網の棒を延長したものと海中電灯さえあれば・・・
岸壁をよじ登ってくる彼らを五匹や十匹手に入れるのは
それほど難しいことではなかったのです。

おそらく密漁なのでしょうが・・・
小生の住んでいた地域の漁師は
岸壁でカニをすくっている子供を
咎めるような風習はありませんでした。

毛ガニや栗子ガニは岸壁の水面付近を
ウジャウジャとよじ登ろうと・・・
太宰治ではありませんが・・・
虫取り網を近くへ持っていくと
向こうから勝手に網の中へ飛び込んでくる状態です。

そんな地域で育ってしまった小生には
毛ガニやウニ・アワビ・いくらなどは
普通に手に入る食べ物でした。

中でも我が家の冷蔵庫を占拠し・・・
家族の誰も食べたがらないので
いつまでたってもなくならない代物が

「松前漬」でした。


今から思えばとても贅沢で・・・
罰当たりなのですが
松前出身の母と函館出身の父にとって
スルメイカと昆布をつけて申し訳程度に
数の子が入っているその食品は・・・

松前から届いた時は勇んで封をきるが・・・
少し食べると飽きてしまい・・・
仕方なく魚卵好きの小生が大量の松前漬にお茶をかけて
大量消費しないと
「次の松前漬が到来してしまう」
「松前漬の玉突き渋滞」という厄介者扱いでした。
母が松前漬を美味しそうに食べている場面に
お目にかかったことはありません。

昔は捨てるほど大量にニシンが取れた・・・


ニシンは肥料にして・・・
数の子は捨てるのがもったいないから
醤油漬にして保存食品とした・・・

その数の子に特産物のスルメイカと真昆布やがごめ昆布で
「味付けを少し変えた」食品が松前漬です。

その食品には「一般的な商品」や「高級品」・「特別な品」
という区別が存在しないのは当たりまえです。
元残り物の合わせ技ですから。

アイヌネギと呼ばれた「行者ニンニク」や蝦夷わさびと呼ばれた
「山間部に自生するホースラディッシュ」を加えて
少し「ツーンとさせた」ものが
母の実家特製の松前漬で・・・

その時々の「安く手に入る食材なら・・・」
アワビ入り・イカの沖漬入り・カレイのエンガワ入りなど・・・
数の子が高価になってからは
「前浜で上がるタラの子」が入っていたり・・・
ホタテ入り・いくら入りなど
毎回同じものが無いくらいいろいろな
「松前漬」が・・・冷蔵庫で誰にも汲みされず待機していました。

松前漬の伝統的な製法は

「スルメイカと昆布を細切りにし、醤油、酒、みりん、砂糖などで漬け込んだ保存食で北海道の郷土料理」
「かつては、塩で漬け込んでいたが、味覚の好みの変化もあって、現在は醤油をベースにした味付けが多くつくられるようになっている。」
松前藩が発祥といわれ
「地元でとれた食材を使ってつくられていた。」
その後「漁師のお母さんたちが冬の料理としてつくり広まった」
ようです。
「松前漬」は
スルメイカと昆布が使われていて
松前周辺でとれる食材が入っていれば
全部「松前漬」です。
「一般的な松前漬」や「高級松前漬」・「特別な松前漬」
は家庭料理である以上存在せず・・・

それを商売として・・・
通信手段を利用して

「宣伝料金を加えて販売するから・・・高価な松前漬」が誕生する。

函館の専門業者が
「これでもか!」と高価な材料で作る松前漬は
「冬の保存食として松前の庶民が普通に食べていた
松前漬とは別の商品に感じてしまいます」

それでも時折・・・関東のスーパーで
100g数百円で販売されている「松前漬」くんが
売れ残っていると不憫になり
買って帰り・・・我が家の食卓へ供しますが
「子どもの頃冷蔵庫の最も奥でひっそりと出番を待っていた」
彼のほうが・・・うまみや昆布の浸かり具合が良く
現在市販されているモノは妙に甘ったるい・・・

これでは保存性は発揮されず・・・
冷蔵庫の緊急登板用選手として
役に立たないのではないかと危惧する次第です。


さいたま郷土料理がなにか・・・小生にはわかりませんが

「特別な五家宝」とか「高価な十万石饅頭」

はほとんど存在しない・・・
ただし 作る店や製法・材料が違うだけだと思います。

誰かが作った原稿を読む増山様
「おいしい」と食する辛抱さん
それはお仕事です・・・

「函館製の松前漬」・・・産地から考えると
函館漬ですが・
・・
それは贅沢な製品で美味しいのは
間違いないのです

「松前に特別高価な松前漬」という概念が無い以上

「一般の松前漬」とは違うと差別化を図られても・・・
「本来残り物で作る保存食を高価な材料で作る習慣は地元にはない」
だから
ニッポン放送が売りたい松前漬は
「美味しい」と仰るのは結構ですが・・・
「地元松前の一般的な家庭料理」を
「一般の松前漬とはちがう」と
ディスられるのは賛同しかねると

異議を唱える次第です。


料理とは高価な材料がすべてではない・・・
小生のように子どもの頃
一生分の毛ガニや松前漬・ウニなどを
食べてしまった人間には
「家族とたべる普通の松前漬」
いわゆる自家製の「一般松前漬」も十分美味です。

食事の味は「誰とどんな場面で食べるのか?」で
決まります。

どんなに高価な山海の珍味でも
ひとり寂しく食べては・・・・

材料の値段で味は変わるかもしれないけれど
安いものを美味しく調理するのが料理人の腕
小生はそう思います。


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