エロイカ
エロイカ 泉ちゃん
「はい!では、最後にどーぞ。お願いします!」
リーダー格の男が夢に手を差し出し、ねるとん紅鯨団のように頭を下げた。
「あっ、はい。安達夢です。看護婦5年目です。で、泌尿器科です」
と言った瞬間に、5人の男どもは
「泌尿器科あ~♡」
と、抜作先生(ついでにとんちんかん)の目で喜びながら言った。
夢より前に自己紹介を行った友人は、小児科・外科・内科・整形外科と言い、その度に男どもは
「よっ!白衣の天使!」
「可愛い!」
「俺も入院したい!」
など合いの手を入れていたが、夢の『泌尿器科』には
「夜の科?」
「看護婦さん達セクシー?」
「男ばっかりの科?」
など矢継ぎ早にイメージを口に出して言った。明らかに他の子達の声掛けとは違った。
リーダー格の男が
「やっぱ、泌尿器科の看護婦さんは、色々強いっちゃろうか?あっちも」
と言ったら、他の男達も
「バカヤロウ!弱いわけなかろうもん。バリよかな科に決まっとうやろ!」
と抜作顔で盛り上がった。
「安達さん選び放題?色々と・・・」
その言葉が言い終わる前に
『バンッ!!!』
と夢はテーブルを思いっきり叩いた。
「あんたらさっきから失礼よ!泌尿器科はね、腎臓・膀胱・前立腺の3本柱の科よ!あんたらが思うとるチン♡とかセックスとかそんなエロい科とは全く違うとやけんね!!!」
「で、参加費投げつけて帰って来たと」
控え室で、休憩中の同期・大橋恵美が夜ご飯を食べていた。夢はコンパの帰り道、苛立ちが収まらず、準夜勤務の恵美に会いに病棟へ寄っていた。
「だって、男どもがさー」
その時、控え室のドアが開き
「大橋さん、休憩中すいません!高橋さんの導尿(管を入れて尿を取る医療行為)が上手く出来ないんですけど~」
看護婦2年目の月島が入って来た
「え?また?月島さん、しっかりチン♡持って引き上げとる?お腹側にチン♡傾けて入れた?月島さん、チン♡から膀胱まで何センチか知っとうと?20センチよ!ネラトン(管の名前)ガンガン突っ込まな!」
月島はもう一回やってみる!と小走りに去った。
夢は恵美の言葉で泌尿器科=エロイ科と確認できた。<完>