スタートアップがマーケティングで失敗する、よくある理由
私はソフトバンク社で長年、ソフトウェアブランド(SaaS)の事業拡大を支援する立場(専任のマーケティング担当)として、新興企業である、スタートアップの内情と失敗を数多く見てきました。
これらの企業は、大きな野心と資金を持ちながら、アーリーステージにおけるマーケティングで同じ間違いを犯しています。
それは“マーケティング”ではなく、“セールス”をしているということです。その結果、望むような成長を描けず大変苦労をしています。
なぜ、このような事態に陥ってしまうのでしょうか?
彼らは、次にある“間違った信念”に基づいてビジネスを構築していることが多く、事業を軌道に乗せる前に失敗してしまうのです。
これからお話しすることはよく聞く話かもしれません。
まさに今、これに該当するからと言って落胆しないでください。
正しいステップを踏めば、軌道修正が可能です。
成長期のスタートアップのマーケティングを誤らせる3つの間違った信念
SaaSの創業者やリーダー達は、間違いなく賢い人たちです。
しかし、彼らは成長し、成果を上げなければならないという大きなプレッシャーにさらされているため、近視眼的になってしまうことがあります。
表面的には理にかなっているように見えますが、長い目で見れば
物事をより困難にするだけの戦略を採用してしまうのです。
間違った信念その1: ”製品至上主義”
製品開発にすべてを費やし、製品や機能を主なセールスポイントにしてしまうと、苦しい戦いを強いられることになります。
競合他社に先を越されたり、製品を完全に模倣されたらどうするのか?
どうやって売り込み、人脈を作り、顧客ベースを築くことができるのか?
成功の真の秘訣は、ブランドの構築です。
あなたのブランドは、あなたの信念、価値観、ストーリーであって、
あなたを市場で際立つことが出来る、唯一のものなのです。
製品を「売る」ことだけに集中すると、コモディティ化を引き起こし、機能そして、最終的には価格で勝負することになります。
要するに、どんな業界であれ、あなたのブランドはいつでも置き換え可能な商品になってしまうのです。
これは、市場を獲得する最も困難な方法であり、市場を失う最も簡単な方法です。
結局のところ、ブランドを構築しなければ、人々を購買に向かわせるもの、つまり感情で競争する機会を逸してしまうのです。
マーケティングによって人々を引き付け、顧客になった後の生活が
どのように良くなるかを明確に伝えることができるブランドでなければ、
顧客から煩わしく思われてしまう、訪問販売員になってしまうのです。
間違った信念その2: ブランドへの投資は “時期が来たら “やるもの
お伝えの通り、スタートアップの資金が流入すると、
多くの創業者はブランドやマーケティングを後回しにし、
製品開発だけに集中する傾向があります。
しかし、それは大きな間違いであり、大きな代償を払うことになります。
ブランド戦略を練る頃には、競合他社に先を越され、
市場で何か印象を残そうと躍起になっていることでしょう。
さらに、強力なブランド基盤がなければ、マーケティング施策は
断片的で一貫性がなく、ターゲットに一貫したストーリーを
伝えることができない可能性が高くなります。
間違った信念その3: 優秀な営業マンを雇えば、勢いを生み出すことができるだろう
意識しようがしまいが、潜在意識レベルにおいて多くのリーダーは、
ブランドとマーケティングに投資しなかったことによる亀裂を、この方法で覆い隠すことができると考えています。
リーダーは、「売る」ことが得意分野である営業チームを雇います。
しかしやがて、リーダー達は、営業担当者が見込み顧客と商談の機会を持ち、顧客へと転換するためには、リード獲得が必要だとに気づきます。
そして、彼らの「マーケティング」は、実際には製品や機能(あるいは価格)を宣伝するだけなので、リードを集めるのに苦労しているのです。
彼らは、見込顧客との関係構築に重点を置いていません。
ブランドのストーリーテリングに重点をおかず、見込み顧客の関心やニーズも重視していないのです。
このような時点になって、企業は専任マーケターを投入します。
そして、多くの場合、最初のマーケターは営業リーダーの部下になります。
この段階でのリーダーのメンタリティは、
“とにかく今あるブランドを使って、マーケティングを始めよう。
もし、響かないのであれば、後で修正しよう。”
という考え方です。
しかしこの時点で、ブランドの立ち位置、評判が確立されてしまうのです。
『マーケティングは販売に貢献。』
この考え方は、マーケティングが、よく言えば戦術的(例:より多くのデモ実演を迅速に行う必要がある)、悪く言えば目的達成のための手段(例:営業チームがリード数が足りないと不平を言っているので、これで彼らを黙らせたい)と見なされることを意味します。
一方、ブランド作りは贅沢で余剰な活動とみなされます(例:今はふわふわしたブランドのことを気にしている暇はない)。
マーケターは、営業リーダーのもと、マーケティングで何ができるだろうかと空想し始めます。
しかし、彼らはブランドもマーケティング戦略も確立されていないこの状況にすぐに行き詰まります。
つまりチームの運営、企業文化、リソースの活用といった場面で、困難に直面します。
チームからの賛同は難しく、多くの人は、自分たちが「何もできない・・」といった機能不全の状態に陥ったように感じてしまいます。
私は、このような状況で燃え尽きてしまうCMOを何人も見てきました。
これらの課題に心当たりがあるなら、それはあなただけではありません。
実は私自身も、マーケターとして転職先のIT企業で同じ苦労をしました。
これまで述べてきたことはすべて、驚くほど一般的なことなのです。
実際、私がこれまで話したほとんどすべての成長期のSaaS企業が経験していることなのです。
しかし、このような困難を乗り越えた企業はもちろんあります。
幸運にもブランドの基盤を手に入れたのだから、あとは手順通り、なすべきことをすれば基盤を維持することができます。
では、どうすれば効果的に事態を好転させることができるのでしょうか。
スタートアップのマーケティングを成功させる方法
マーケティングを軌道に乗せれば、それは簡単な処方箋です。
基本をしっかり整える
ブランドは贅沢品ではなく、ビジネスを成功させるための基盤です。
基本に立ち返るために、ブランド戦略から始めて、ブランド・ハート、メッセージ、ビジュアル・アイデンティティを明確にしましょう。
これらの構成要素によって、今後のすべての行動が整合性を持ち、目標を追うことができます。
私たちの無料のブランド戦略ツールキットを使って、これらの要素に取り組み、戦略を紙に書き出してみましょう。
ストーリーに集中する
単にコンテンツを作るのはやめましょう。
多くのブランドが、コンテンツのためのコンテンツや、販売に特化したきれいなコンテンツを量産し、コンテンツ・マーケティングと称する仕事に忙殺されています。
人々は、あなたのブランドとつながりたいと思っているのであって、売り込まれたいと思っているわけではありません。それよりも、
“あなたの会社やブランドのユニークな点“に焦点を当てましょう。
そして、読者に自分と同じ経験をした、知的な先輩と話しているのだという安心感や信頼を感じさせるコンテンツと認識してもらいましょう。
また、より良いストーリーを考え、適切なフォーマットで伝えることを忘れないでください。
「より少なく、しかしより良く。」
ブランドを再構築すると、同じ量のコンテンツを作りたくなるかもしれませんが、伝えるストーリーは慎重に、かつ厳選してください。
いずれコンテンツを拡大していくでしょうが、新しいコンテンツ戦略を開始する際には、意図的に、テストし、改良を重ねてください。
また、高品質のコンテンツを一貫して制作できるよう、インフラを最適化する方法も検討する必要があります。
このプロセスにしんどい思いをされるようであれば、
適切な専門家を活用すべきです。
あなたの業界と目標を理解している人とパートナーを組むことが
重要なのです。