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めまいがない日は人生バラ色
めまいの発作は突然やってくる。予想できない。軽い時もあれば動けないくらいひどい時もある。私にできることはいつも対処できるよう常にポケットに薬を入れて持ち歩くだけだ。こういう体だと諦めて付き合うしかない。むしろ薬が効くだけありがたいのかも。
朝目覚め起き上がるために寝返りを打つ時が、一番緊張する。ハズレの日は天井がグルグル回り出す。「ああ〜…今日もめまい!」と落胆する。
ここ一週間は幸いアタリ続きで、寝返りをしてもめまいが起きない。めまいがないだけでその日一日、バラ色となる。
健康のありがたみを噛みしめる。歩くこと。自転車に乗ること。食事が美味しく食べられること。本を読むこと。働くこと。全部、当たり前にできることが当たり前ではないことに感謝する。
河野進さんの「ぞうきん」という詩集に「病む」という詩がある。病まなければ知り得ないことがたくさんあるのだと気付かされる。
つい私は傲慢で自分一人で生きてきた気になってるけれど、そんなことはあり得ない。すべての生き物は周りの生き物に助けられて生きている。この詩を読むと謙虚な気持ちになる。忘れないように詩を書いた紙をスケジュール帳に挟んで持ち歩いている。
不幸な状況だからこそ、周囲の人々の優しさに気づくことができる。
たまに来る本社のちょっと取っ付きにくかった男性上司もめまいの持病があるらしく、今回初めて知った。めまいに苦しむ後輩である私に、自分の歴戦のめまいあるあるネタを披露して励ましてくれた。優しくて面白い人だった。自分の辛い経験を笑い話にできるその強さとしなやかさ、尊敬する。
めまいがないだけで、その日一日気分が明るい。
主治医の先生からは、めまいが完治することはほとんどないから上手に付き合っていくしかないと言われている。
いつか、めまいがある日でも心穏やかに明るい気持ちで過ごせたらいいなと思う。