【ファジサポ日誌】17.苦手3バック克服なるか?~第29節vsジェフ千葉~
こんにちは。
J2リーグもいよいよ全日程の1/3を残すのみとなりました。
まずはこの段階まで昇格争いに加わり、サポーターにワクワクを与えてくれている選手、スタッフ、クラブに感謝します。
そして、今シーズンのファジアーノ岡山は、まだ成長の伸びしろを残しています。
ホームゲーム中心のこのレビューですが、これからもチームの成長と勝負の両面にフォーカスしていければと思っていますので、引き続きよろしくお願いします!
■ 気になる記事
ホーム千葉戦を前に気になる記事を見つけましたので、今回はまずこの記事から触れてみたいと思います。
今シーズンの千葉は3バック(5バック)でスタートしましたが、DFの核となる鈴木大輔や佐々木翔悟の負傷離脱により、第21節(6/11)から4バックに変更していました。
しかし、最近この4バックも対策を練られているので、再び3バックに戻し最終ラインを安定させたい…とユン監督がコメントしたと載せられています。
なぜこの記事が気になったのか?
それは、今シーズンのファジアーノが3バック(5バック)のチームを苦手にしているからです。
3バックと言っても、試合中にポジションが可変するチームもありますし、熊本や大分のように独特な立ち位置を採用するクラブもありますから一概には言えないのですが、共通点は守備時に最終ラインにしっかり人数をかけて、相手の攻撃を跳ね返すという点でしょう。
直近の3バックとの対戦は前回のホームの栃木戦でした。
栃木も守備時に両WBが下がり、5バックのような形で守ります。
この試合は得点を奪えず、スコアレスドローに終わりましたが、栃木を押し込みながらも決定機を作れずに苦労していました。
千葉戦のレビューながら、少しだけこの栃木戦を振り返らせてください。
前半28分頃のシーンです。
岡山が栃木を押し込んでいます。栃木は黒崎、大森の両WBも戻り5バックで守ります。ピンチですから他ポジションの選手も自陣のカバーに戻っています。
岡山は栃木のCBの中心的存在、グティエレスを上手く引き出したのですが、4バックと比べて、最終ラインの枚数が多い分、ゴール前で数的優位を作れていません。
田中はこの混雑したゴール前を避け、逆サイドのスペースに走り込む徳元へクロスを送りますが栃木に対応されてしまいました。
岡山が3バック(5バック)を苦手としている理由が理解できるシーンだと思いました。2つその理由を挙げてみます。
・PA内(特にゴール前)で数的不利となる
・相手が完全に帰陣してからの攻撃が多い
(※2点目に関しては前回のレビューでも触れています。)
そして、もう一点この千葉の記事には気になることが書かれていました。
それが、育成型期限付移籍で加入した田邉秀斗の存在です。
彼の加入が3バック移行への大きな要素となっているようなのです。
田邉秀斗選手、どのようなプレーヤーなのでしょうか?
名門、静岡学園から川崎フロンターレに入った高卒2年目と書くだけでスゴイ!と思ってしまうのですが、プレーを観たことがなくてどんな選手なのか分からないのです。しかし、ユン監督にシステム変更を決断させるだけの選手といえるのでしょう。
土曜日(ゲーム当日)の朝にこの記事を読んで、少し嫌な予感がしてしまいました。果たして結果は?
■ 千葉戦 結果とスタメン
前置きが長くなってしまいましたが、千葉戦の結果とスタメンを貼ります。
やはり千葉は3バック(両ウィングが下がっての5バック)でした。
何もこの試合から変えなくてもいいのに…と思いましたが、岡山が3バックを苦手にしているというデータは千葉も持っているはず。対策されたという印象でした。
そして、千葉の同点ゴールは注目していた田邉のドリブルによるロングカウンターから生まれました。こんなプレーができる選手なのか…、不意をつかれたいう印象です。ユン監督の起用が当たりましたね。
岡山PA手前まで侵入を許してしまった点については、途中で止める、または遅らせるなどの対応は必要でしたが、田邉のプレーデータも少ない中では、あのドリブルは予想できなかったかもしれません。
その前のデュークのプレーは、個人的にはシュートを打ってほしかったのですが、仙波の前にもシュートコースがあったように見えましたので、あの判断が間違いとはいえないと思います。仙波も加入したばかりですので、各選手とのコンビネーションはこれから向上するものと思います。
では、ゲーム全体として岡山は千葉の3バック(5バック)に苦しめられたのかというと、決してそうではなかったと思います。
後半10分、岡山の先制点のシーンをみながら、千葉戦での3バック攻略について振り返りたいと思います。
■ 先制点のシーンから考える3バック(5バック)との戦い方
① まず千葉の守りの特徴を考える
前線の選手がボールを保持するCBにプレスし、サイドへと誘導する守備は岡山も行っていますし、それ自体は珍しくはないのですが、千葉の場合はサイド誘導後の囲い込みに枚数を掛けますし、その強度も強く、選手間の距離感も非常に良い点が特徴のひとつかと思います。
おそらく3バックを導入している理由のひとつにCBの一枚がこの囲い込みに加わることが出来る点が考えられます。
この守備に手こずり、苦戦したのがアウェイ、フクアリでの千葉戦でした。岡山はサイドで起点を作ることが出来ず、無得点に終わったのです。
では、この試合はどうであったか。
岡山先制の起点となった佐野の動きについてみてみましょう。
② 佐野航大の動き
岡山がカウンターに入った場面です。
センターサークル付近でボールを受けたチアゴの左前方のスペースへ、3-1-4-2のシステム変更に伴い、後半からLWGに入った佐野が素早く走り込みます。このスピードが速かったですね。
千葉のRWG福満の戻りは完全に遅れていましたので、相手守備陣形が整う前に攻撃を開始できた点がまずよかったです。
それでも千葉は、ボランチの小林、田口、CB新井の3人で佐野を囲む体制を作りますが、佐野はここで意表を突く中へのターン、田口を剥がして更にピッチ中央へと切り込みます。
この動きは少なくとも千葉の守備を混乱に陥れたようにみえました。
ピッチ右側までドリブルしてきた佐野に帰陣した千葉ブワニカがプレスしますが、その前方のスペースへ河井が走り込んできます。
③ 河井陽介の動き
先ほどの続きです。かなりの距離をドリブルしてきた佐野に千葉ブワニカがプレスを仕掛けるタイミングで、河井が佐野の視野前方へ。佐野は河井からのリターンを受けて、ブワニカを交わすと右サイドで待ち構える河野へパスを出します。
この河井の動きは気が利いてましたね。しかも受けて前方ではなく、更に右に走り込む佐野へ出し、自身はPAへ。もう河野にクロスを上げさせ、自身はPAでおとりになるところまで見えていたプレーでした。
新潟戦の同点ゴールの際に佐野にパスを出したシーンもそうなのですが、河井は目の前にボールを出すのではなく、二手、三手先を読んで最も得点の可能性が高くなるパスを出します。
新潟戦、千葉戦と河井の良さが出始めている要因も3-1-4-2へのシステム変更です。ボランチから一列前でプレーすることで、バイタルで決定的な仕事ができるようになりました。
この佐野、河井の一連の横の動きは、ゴール前で5バックを形成している千葉の幅を広げる効果があったように思います。
④ 河野諒祐のクロス
そして極めつけは河野のクロスですが、利き足の右ではなく、左で巻くボールを蹴れた点がよかったです。岡山の攻撃が意表をついたのか、千葉は早いタイミングでゴール前のブロック形成を優先していました。その結果、PA前にスペースができ、河野のプレーに余裕が生まれていました。
⑤ PA内の枚数を増やす
最終的には千葉はゴール前にしっかり枚数をかけていましたが、ここにデューク、チアゴ、田中の他に河井が入り込み、岡山もしっかり枚数を掛けられていました。これも河井が前でプレーした効果といえます。
⑥ デュークとチアゴの2トップ
PA内のメンツの効果は大きいと思いました。デューク、チアゴ、いずれか1人よりは2人同時にPA内にいた方が、相手のマークも当然分散します。守備のこともありますので、難しいことは承知ですが、この2人を同時起用する時間はもっと増やしたいものです。
■ まとめ
以上、先制点のシーンを中心に振り返りながら、岡山の3バック攻略について考えてみましたが、非常にポジティブな材料を得られたと思っています。
①~⑥の各プレー・要素は全てが連動しており、岡山苦手の3バックを打ち破った得点としても意義あるものと考えます。
長々と書いてしまいましたが、一言でいうとピッチを広く使って、相手の幅を広げるということだと思いました。
試合結果は残念ながらドローでしたが、この先も3バック採用クラブとの対戦が続きます。今週末の岩手、首位の横浜FC、甲府、それぞれスタイルは異なりますが、3バック攻略という観点では光明が見えた一戦でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※敬称略