なぜ上昇気流が起こるの?
「上昇気流」と聞くとこれを読んでるあなたは何を想像するだろうか。
「上昇気流によって空に行った水蒸気が冷やされて雨となって降ってくる」なんて話を中学校で習ったことを思い出す人がいるのかもしれない。
また、上昇気流は気圧の差によって起こるなんて話を思い出すのかもしれないし、漠然と「気流」という言葉から飛行機が飛ぶときの機体周りに空気の流れを想像する人もいるかもしれない。
これらの共通点は「暖かい空気は暖かくない空気よりも上に行く」ということである。
しかし、なぜ空気は暖かくなると上に行こうとするのかと言われて答えられる人は意外にも少ないのではないだろうか。
そこで今回は、「暖かい空気は暖かくない空気よりも上に行く」という法則の理由を説明してみようというのが本記事の主旨である。
気体、液体はある観点で同じ?
物理学において、気体を力学的に扱う分野として熱力学や流体力学がある。これらの分野の特徴は「1個の粒子の振る舞いを研究する」ニュートンの力学とは異なり、「粒子の集合体を、集合体としての振る舞いを研究する」分野という点にすべてが詰まっている。そしてこの集合体の中で気体や液体など、「集合体として見たときに自由に変形できるもの」を”流体”という。
空気のように軽いのか、水のように空気より比較的重いのかという違いを除けば、気体と液体は、「自由に変形できる」という点で同じなのである。
まとめ:気体と液体は両方とも流体で、流体の定義は「自由に変形できるもの」!
アメンボが水に浮くのはなぜ?
みなさんはアメンボという生き物を見たことがあるだろうか。
そうそう、川に浮かんでるあいつのことだ。なんでかよくわからないけど水面を沈むことなく進んでいくあいつのことだ。
そのアメンボが沈むことなく水面を移動することができる理由はずばり「足に油が分泌されているから」である。
ではなぜ足に油がついていると水に浮いていられるのだろうか。
その理由は「油が水より軽く、かつ油と水が混ざらないから」である。
油は化学的には種類が多いが分子の重さはどれも水分子よりも著しく軽い。
ニュートン力学によると、重力は力を受ける質量に比例するため、水分子の方が下向きの受ける力が大きい。したがって水分子は油の分子より下に行く。そして水と油が混ざらないため、水は水、油は油で一塊になった結果、水の上に油が浮くような現象が生まれたわけである。
このことをさらに良く理解できる実験動画がYouTubeにあるのでここに載せる。
この動画では小さい鉄球と大きい鉄球が等しく沈んでいる。したがって鉄球の大きさによって結果が変わるものではなく沈んでいくわけである。このことから、単位体積あたりの重さ(これを密度という。)が重いものが下に行き、軽いものが上に行くことがわかる。例えばこの実験装置をすべて10倍の大きさにしたとしても同じ結果になるわけである。
(もし大きさによって結果が変わるなら南極にあるデカイ氷は全部沈んでいる。)
また、振動を与え流体の性質を持ったときに物が浮かんだり沈んだりしていることから、この性質は流体のものであることもこの実験では示している。
ここでは密度で比べていたが、単位体積あたりの粒子の数が等しい場合、その流体を構成する粒子が軽い方が、単位体積あたりの重さが軽くなるため、上に行く。
油を構成する分子の重さは水分子よりも軽いため、油は水に浮くのである。
まとめ:
・互いに混ざらない、密度の異なる流体を一緒の容器に入れると、より密度が軽い流体が上に行く。
⇒例)液状化現象
・単位体積あたりの粒子の数が等しい場合、構成する粒子が重いものが上に行き、軽いものがそれに従い上に行く。
⇒例)アメンボ
空気の熱膨張と密度
さて、ここまでは液体の話ばっかりであったが、そろそろ気体の話に移ろう。
また、今回は気体を熱することで流体の重さにどう影響を与えるのかを調べたいが、構成する粒子の種類は変わらないので、熱した場合とそうでない場合で気体の重さは一見変わらないように思えるがそうではない。
同じ種類で温度を変えると流体は密度が変わる。
これを理解するための話をしていこう。
ということでまず、物質の温度とはなんだろうか。温度が高いとは、物理的に何を指しているのだろうか。
この答えは「物質を構成する粒子の振動の度合い」である。何を言っているのか分からないかもしれないが、我々から見て静止しているように見える机も本も、その表面を拡大して見ていくと粒子たちが震えているのである。
(余談だが、熱いものを手で触ったときに痛いと感じるのは、手にすごい勢いで粒子たちがぶつかっているからである。)
そして粒子数が変わらない気体の温度を上げるとどうなるのかというと、粒子の行動範囲が増えたため体積が増える。(これを熱膨張という。)それにともない一粒子が担う体積が増えるので、単位体積あたりの粒子数は減る。粒子一つの重さは変わっていないので、気体の単位体積あたりの重さ、すなわち密度は減る。
ここまできたら、上昇気流を説明する準備ができた。
まとめ:気体は温めると密度が軽くなる。
上昇気流の説明
さて、ここまでの話を整理しよう。
・流体の概念の紹介によって、「液体の議論と気体の議論はつなげられる」ということが分かった。
・アメンボの説明によって、「密度が重い流体は軽い流体よりも下に行く」すなわち「密度が軽い流体は重い流体よりも下に行く」ということが分かった。
・また、前節で「気体を温めると密度が軽くなる」ということが分かった。
これらのことから、上昇気流の説明ができる。
①空気が温められることによって、温められていない空気よりも密度が軽くなる。
②密度が軽い気体は密度が重たい気体よりも上に行くため、温められた空気は温められていない空気よりも上に行く。
③これが上昇気流である。
以上が上昇気流の説明だ。
ちなみに空気だけでなく水蒸気についても同じことが言える。水分子は空気を構成する要素の分子の重さの平均よりも重たいが、温められて単位体積当たりの重さの密度が常温の空気を下回ったため上に行くのである。これが後に雲になって、上空で冷えて空気よりも重くなると、雨となって降ってくるのである。
最後に
今回は上昇気流を流体の観点から説明を試みたのだが、いかがだっただろうか。
他から学んだことだけでなく、私の中で考えたことも含まれておりところどころ厳密には間違っているかもしれないので、指摘等がありましたらぜひ宜しくお願い致します。
またこのアカウントは、物理学のさまざまな視点を提供し、日常に新たな彩り(物理)を読者が見いだすことを目標としております。
今後も他のトピックの記事を書いたり、物理学の洋書の和訳およびまとめを載せてみたり、私が過去に作った院試の過去問の答えを掲載したりしようかと思っていますので、ぜひフォローのほどよろしくお願いいたします。
Field Hawksでした。
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