見出し画像

デイゴ。

暗く星があまねく中、メフィラス星の母船は浮かぶ。
船の中に、あの黒い異星人は一室をもらっている。
薄暗い明かりの中、地球から持って帰った木がある。
花らしくない赤い花をつけるくせに、その存在感は心を震わせた。
地球の名前でディゴ。
マメ科デイゴ属。別名カイコウズ。
学名はErythrina crista-galli
夏にしか咲かないのだが、今年の地球は、夏らしからぬ暑さで、デイゴだけなくサルスベリも何度も花を見せてくれた。
花言葉は「勇敢」「情熱」「活力」
あの赤い花は、こんな面があるのだな。
自分の部屋の片隅においたデイゴの木に、メフィラスは
そっと手を触れる。
「こんなとこに連れてきてしまった私を、君はどう思っているのだろうね」
黄色い眼の点滅が、ふっと緩やかになる。
「どうしても、君を私の母星に連れて行きたかったのだよ」
赤い花がふるりと揺れる。
「君を一目見た時、何かを感じた。それが何なのかは今もわからない」
細い黒い指が緑の葉に触れる。
「君は,私の知っている宇宙人に少し似ている」
赤いボディライン、銀色の身体。
人間に恋をし、短く濃い人生を駆けたあの変わり者。
「今頃どうしているのだろうね」
宇宙船の窓から光が差し込む。
「乾燥してきたかな?水をあげよう」
地球産の透明で無臭の液体を、メフィラスはデイゴに与えた。


久しぶりにシン・ウルトラマン関連のショートをアップ。
山本耕史さん演じるメフィラス、好きでした。
初代マンのメフィラスの声を演じてた方も好きでしたが、
基本、悪人だけど、どこか非情になれない部分が少しある
ところが惹かれるのかも。
デイゴの木を見かけるたびに、メフィラスはこっそり
採取して、マルチバースに隠してたとかなんて妄想。
バラとかひまわりとかには、興味もたなさそう。
「ああいうのは、好ましく感じませんね」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?