淡河の翁。
あるところに、淡河の翁と呼ばれる人達がいます。
翁達は3人。交替で山に入っていきます。
そう、白黒のあの子のための、タケノコや笹を取りに行くのです。
翁達は、あの子がおいしそうにたべる姿を思いながら、
ガサガサと竹林を分け入り、新鮮で歯ごたえのある
竹を探します。
「ふぅ、いいのんあれへんなぁ」
汗をかきかき、翁の一人は奥へ奥へと入っていきます。
「ホンマ、あの子は食べ物にうるそうて、気に入らへんかったら、見向きもしてくれへん」
それどころか、ちょこっと口にしても、変な匂いがしたり、
新鮮じゃないとわかると「こんな笹、食べたくないわ」と
プイ。
「わしらのお姫さんは、好みがうるさいからなぁ」
もう1人の翁が笑います。
「どの竹でもいいわけやないし、おかげさんでこっちも竹にうるそうなったわ」と大きな声で笑う翁。
でも、どんなに大変でも、おいしそうに頬張る姿を見ると、こちらもうれしくなります。
「おいしいやろ?」
「もちろんよ、だって、おじいさんたちが取ってきてくれた
竹だもの」
ムシャムシャと枝葉を頬張り、次はこれと新しい竹を手元に寄せます。
「ねぇ、タケノコは?」
「取ってきたで、食べるか?」
「もちろんよ」
「食いしん坊やなぁ」
「だって、おいしいもの。淡河のがいちばんだわ」
舌でペロリとなめ、うれしそうに答えます。
白黒で、グルメで、食いしん坊なあの子。
どんなにしんどうても、この子のこんな顔が見れるんがいちばんや。
今日も翁達は竹を取りに行きます。
タンタンが亡くなって、1週間。
ことある毎に涙が出ます。
まだまだ、消化するには時間が掛かりそうです。
でも、こんな感情も思いも教えてくれたのはタンタンですから。
今回は、いつも竹を取ってきてくれた淡河のおじいさん達の話を書いてみました。
以前、テレビでも少し出ておられたのですが、今回タンタンが亡くなってしまったので、以後、翁のお役目がどうなるのか・・・。
もうちょっと元気が出たら、淡河に行ってみたいと考え
はじめています。
タンタンの竹ですが、同じ園にいるアジアゾウのズゼちゃんに、おすそわけされたそうです。