深酔いエッセイ11「お笑い回顧録 中島らも」その2
次に回顧したいのは、この男である
しかし私は、その男の名前を知らない
男は何かをやらかして、誰かに背中を強く押される
男は突き出た腹を床にこすり、「アツアツアツ!」
寸評
シンプルイズベスト、と言ったところか
摩擦熱に耐えた芸人が、
アツアツアツ
さぞ熱いだろうと思うとともに、彼の腹の皮が剥けてないことを祈るばかりだ
吉本ネタ最後は、島木譲二のカンカンヘッド
パチパチパンチの進化バージョンである
「はよ借金の百万、返さんかい!」
と島木は滑舌悪く、内場に言った
「すみません、商売がうまくいってなくて
借金の百万、もう少し待ってくれませんか?」
「あかん!
俺の恐さ知らんようやな
俺の恐さ知ったら、お前も百万ぐらい、すぐ払うやろ」
「あれやりはるんですか、周りにドラム缶いっぱい置いてるし」
「あれってなんや?」
「カンカンで自分の頭叩くやつ」
「言うな〜!それ!
まあ、ええやろ
カンカンヘッド、やったろやないかい」
島木はドラム缶を頭上に持ち上げ、その腹を頭で叩いてへこませた
「どないや〜!
どないやねん!」
「あかんわ、そんなん
角でやらな」
と内場が言った
「角?
やったろやないかい、やったろやないかい!」
島木はドラム缶を持ち上げ、角を自分の頭に向けた
しかし島木は、ドラム缶を持ったままでいる
「できるか〜!」
寸評
和食の名店の味重ね、ではないが、アホ重ねが最高である
また島木の滑舌の悪さが、さらに妙味を加えている
島木譲二、素材系の芸人として、記憶に残る人である