見出し画像

毎月短歌連作部門~斎藤君選12~

こんちには。風呂で全裸がなぜ悪い、でおなじみ斎藤君です。深い意味はないので早速本題に入ります。今月も毎月短歌連作部門の選をさせていただきました。沢山のご投稿、本当にありがとうございます。それでは発表です。ででん。

一席 あまりに個人的な せんぱい

故郷、あるいは縁のあった土地での思い出とそのノスタルジーを詠んだ作品と解釈しました。「透明なノスタルジー」と形容したくなるような切ない作品だと思います。適度に配置された具体物やエピソードから、その頃主体が生きた場所の雰囲気がゆっくりと立ち上がり、同じ経験をしたことがない私でも「わかる!」と思わず頷いてしまいました。四首目にポンと自由律が放り込まれるのですが、それも効いていると思います(ただ、定型にしてもきっといい歌でしょう)。エピソードの過剰な説明に終始することなく、きっちりと情感を醸し出すあたりに作者の技量を感じました。

二席 エンジョイ人生 三月

とても面白い連作でした。どんだけ死にたいんだよ!と心の中でツッコミながら読ませていただきました。全ての歌に「死にたい」が入る特殊なタイプの作品ですが、この手の作品は人を選ぶことが多く、なかなかノレないことが殆どかもしれません。しかし、この作品は私の波長に合ったというか、読んでいてとても面白い&心地よいものでした。一首目の( )の使い方も素晴らしいと思います。

三席 冬に怯える 宇佐田灰加 

全体としてバランスのとれた完成度の高い連作だと思います。韻律を巧みに崩してくるあたり、さすがとしか言いようがありません。詠んでいて「あぁ・・・美味しい・・・」と唸ってしまうほどでした(食べ物がテーマではありません。念のため)。読者を飽きさせないだけの歌の手数の多さが羨ましいです。冷たい温度感を湛えた作品ですが、時折柔らかさや暖かさを盛り込んでおり、連作の教科書みたいだなぁと非常に興味深く読ませていただきました。

続いて私が勝手に設けた一首部門のコーナーです。ででん。

チンニングさせるべきで賞
箭田儀一 「隙間」より

木の枝にぶら下がりたいと言う君をまた正論で制してしまう

きっと半袖黒Tで賞
中村 杏 「Far Away」より

降りかかる雪は素肌に溶かされて寄り添うことは消失だった

実際あいみょんはアレンジャーが素晴らしいで賞
北野白熊 「余命五十億年」

告白を告白で打ち返す君 マリーゴールド枯れゆく冬に

ワールズエンドスーパーノヴァ賞
畳川鷺々 「電波星」より

みたことのない嘘ばかり手にひろげ教えてさいごの星の煌めき

goがwentになるの未だに許せないで賞
くらたか湖春 「星から逃げる」より

過去形で生かされている好きという気持ちもみんなみんな過去形

フォークが宙に浮いてるあれ考えた奴天才で賞
真朱 「素材のままでいたかったのに」より

オリジナルメニューを作らない店の食品サンプルみたいなデート

猫は液体で賞
りのん 「winter」より

ふゆと書けばどこもかしこも丸くってふとんに沈むねこに似ている

トイレクイックルでぶわぁーで賞
松たかコンヌ 「遊戯強制終了」より

家を出る前にトイレを掃除して They say だから嫌われている

実際水が一番美味いで賞
根古野文々 「ぼくの神様」より

朝すごく冷たい水をお供えの花にもあげる ごめん寒いね

宇宙は速度で賞
汐留ライス 「冬寂」より

十数年ぶりの実家は変わらずに膨張と収縮を繰り返す

惑星にエスカレーター賞
木ノ宮むじな 「トーキョーINN」より

追い抜きのためのレーンは空いている立ってスマホを注視する群れ

メロンソーダとチリドッグ賞
ゆひ 「魔法の暮らし」より

ダイバーがコップのフチに座ってる泣きたいときのソーダの海辺

素数を数えま賞
そんりさそうこ 「手ざわり」より

朝に飲む薬が1から4に増え先輩だから先に飲む1

大人になるとコブクロ美味いで賞
納戸青 「♀(メス・VENUS)」より

今生で燃やしつくした内臓をいつか慈愛のまなざしで解く

重量計測式のセルフレジは敵で賞
桜井弓月 「車椅子ユーザーとテクノロジー」より

セルフ化の波は健常者だけ乗せテクノロジーで広がる格差

トマトの甘味を引き出しま賞
維々てんき 「人のいろんな」より

ナポリタンの化石 古着は人生の匂いがすればするほど安い

ウォシュレットって神で賞
白鳥 「美しい鬱より」

何かしら変わるだろうかこの日々は前髪切れば便座くぐれば

シアーハートアタック賞
てと 「証明写真」より

心臓が左にあるので何事も中心線からそこそこズレる

休日中央線が杉並3駅飛ばすの狂気で賞
あさの つき 「無人改札」より

快速は止まらん駅でふたりよりひとりが似合う曲ばかり聴く

オレは花も木も虫も動物も好きなんだよ。嫌いなのは人間だけで賞
空虚 シガイ 「乱流」より

人混みに入ってちゃんと人間が嫌いとわかりマスクをつける

あんだけ舐めるの罪深いで賞
白雨冬子 「Unmanned Flight」より

逆上がりをあきらめた手はさしあたりあんまんなどを持つためにある

幽波紋と書いてスタンドと読みま賞
はじめてのたんか 「嘘ばかりかこんで」より

ダイニングテーブルがあるだけで今日を二人以上で生きた気がした

GUの由来は自由ですが私は何も言わないで賞
六日野あやめ 「まっちゃんが消えた夜」より

GUの床を磨いてきた母が廊下を拭いて網戸を洗う

継続はパワーで賞
鯖虎 「シャリほどの決意」

ひと肌の寿司のほどけるシャリほどの決意でジムと交わす契約

以上です。今月も沢山のご投稿、ありがとうございました。あーー金持ちの婿養子になりてえなーーー。

いいなと思ったら応援しよう!