毎月短歌連作部門 斎藤君選8

あぁどうもこんにちは。斎藤君です。光栄なことに第一回?からずっと毎月短歌連作部門の選者をさせていただいているので、いい加減前置きのネタがありません。なのでもうさっさと本題に入ろうと思います。どうもすみません。わかめそばっておいしいですね。ふはは。足掻いてみてもこの程度。
それでは発表です。ででん。

LOVE TRIP賞(一席)
「シティポップ」 onwanainu

タイトルに相応しい浮遊感と甘さが連作全体に行き渡っており、唐突な印象を受ける体言止めや括弧、そして句跨がりがとても効いています。ビートのリズムをあえて少しだけ崩すことにより、単調さを回避しながらメロウな空間を作り出すDJのような仕事をしていると思いました。言葉の組み合わせも距離感が絶妙で、思わず唸ってしまいます。読んでいてとても気持ちいい一編でした。

クレイマークレイマー賞(二席)
「家事をするひと」 まちのあき

何事もなさそうな日常の家事をしている描写が続きますが、その中に「満たされないもの」或いは「満たされることのないもの」を香らせており、その韜晦具合が絶妙です。事物を通しての心境の比喩が巧みで、歌の数は少ないながら異様に存在感を放つ一編でした。

ハービー・デント賞(三席)
「半分のせかい」 りんか

全体的にリズム感が心地よく、呼んでいて独特の安心感がありました。ドキッとさせるような下句のキマり方がとてもかっこいいです。あらゆる「半分」を詠み込んでいますが、クドくならずに読み切らせるおもしろさ(通底したテーマ故か?)があると思います。

続いて私が勝手に設けた一首表彰のコーナーです。ででん。

さんを付けろよデコスケ野郎賞
雨 「名」より

きみの名を呼び捨てにした夢だったアロサウルスのヒゲが見たくて

スリーピングビューティー賞
納戸青 「モア・ザン・プリンス」より

美しくなくちゃ見つけてくれないよ 眠りは鍵の形の呪い

拇指対向性こそ文化の根元で賞
梅雨すみれ 「主文」より

イチジクの皮を上手にむくひとのゆびを裸眼の端に絡める

この子鉄男で賞
つじり 「光に落ちる」より

自転車と子供はひとつの生き物になってペダルは鼓動の早さ

松崎しげるの呼び声賞
真朱 「夏の光」より

闇は濃く光は強くなってゆく工程を経てあなたは夜景

それでも僕はやってないで賞
箭田儀一 「満員なんて比じゃない電車」より

朝に乗る満員電車で触れた手が今日の最後のぬくもりだった

人工呼吸は鼻を塞ぎま賞
さんそ 「8月32日 晴れ(時々雷雨)」より

最終日 湿気た空気が肺に満ち、空に溺れる魚になった

トーキングヘッズ賞
睡密堂 「変声期」より
しゃべらない少年に果物をむく母のナイフは母だけのもの

紙ストローも美味しいで賞
ZENMI 「加速の人」より

新しい季節がワタシと巡りだす太めのストローで加速をつける

死は救済で賞
T・G・ヤンデルセン 「フォカヌポォw ~推しを守って死ぬオタク~」より

フォカヌポォ・・・生まれ変われるものならば・・・次も貴女を・・・おしたい・・・コポォ

柳井会長税金もっと納めま賞
海老珊瑚 「のっぺり」より

ユニクロのスウェット上下に身を包みユニクロにいく日曜の午後

一酸化炭素に注意しま賞
せんぱい 「みなそこへ行く」より

火傷するどころではない火遊びをできる意気地はなくてチムニー

雨に唄いま賞
中白春海 「青い流れ」より

雨音に気付けるようにできている 神様はすぐしくしくと泣く

ブラジルの人が飛び上がるで賞
アゲとチクワ 「休日のキャッチボール」より

ノーバンで取るのは少し難しく地球めがけてボールをなげる

たいあたりしま賞
もくめ 「あなたに決めた」より

ねえポッポ、戦うことを好めない私みたいなあなたに決めた

マイクでゴン!で賞
香野霧子 「From 戦争を忌む者」より

安保理でアニメ映画を観ませんか?「火垂るの墓」ってタイトルのやつ

どちらが松崎しげるで賞
ケムニマキコ 「ルックバック」より

約束のように出会った スイミーになれない黒と黒のふたりは

以上です。今月もありがとうございました。それではまた。ふはは。

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