欲と犠牲

登場人物
 
☆アラン
第一王子
天真爛漫な性格
いつも親衛隊を率いて戦いに行っている。
女はか弱い者という思考を持っている。
弟思い

△ルイラン
第二王子
おとなしい性格
いつも部屋に引きこもって本を読んでいる。
外にあまり出ないので人との関わりが苦手である。
兄のアランは苦手だが尊敬している。



「本編」

―ドアをノックー

☆「おーい、ルイランー?いるんだろー?」

-激しく何回もドアをノックする-

☆「おーい!いるなら返事しろー!」

-扉が開く-

△「なに。」

☆「なに。じゃねぇよ。お父様が呼んでいたぞ」

△「え?お父様が?」

☆「内容は分からないが、早く行くぞ」

△「僕はパス。」

☆「大切な話なんだとよ。一緒に行かないと僕が怒られるんだ。ほら行くぞ!」

△「ちょっはなせ!1人で歩くから離せって!」

-2人で並んで歩く-

-数時間後お父様の話が終わり部屋へ帰る2人-

☆「結婚...?」

△「聖女...?」

☆「お父様の話だと、僕達2人のどちらか片方が聖女と結ばれれば、お父様の跡継ぎになるっていう話だったな。」

△「その前に、僕達はその聖女というものを見てないし、どんなやつかも分からない。しかも、僕たちはまだ結婚できる歳になっていないんだぞ」

☆「そうだな。そんな結婚とかわからないし、強い剣士になるために、毎日の剣の稽古で忙しいから、そんな暇は無い。僕はパスだな。」

△「僕も医学の勉強で忙しい。最近、とても興味深い医学書を手に入れたんだ。だからパス。」

(沈黙)

☆「じゃあどうんすんだよ。僕たちのどちらかがその聖女と結婚しなきゃならないんだぞ?」

△「そんな事言われても困る。まだ先の話だろ?」

☆「んー。まぁそうだな。とりあえず、1回その聖女を見に行くのはどうだ?」

△「えー。めんどくさい。兄さん1人でいけば?僕は今から医学の勉強をするから。じゃあね」

☆「そう言わずに、行くぞ!ほら!」

△「僕は行かないって言ってるだろ。離せ!僕は医学の勉強で忙しいんだ。兄さん離してくれ」

-力が足りずに引っ張られるルイラン-

☆「ほら、あそこにいるのが聖女らしいぞ」

△「はぁ…僕は医学の勉強がしたかったのに…言っとくけど、聖女に興味がな…」

☆「ん?どうしたんだ?」

△「聖女ってさ…年増な女の事じゃなかったのか?僕はてっきりババアみたいな女のことかと思ってた」

☆「お前は馬鹿だなぁ。僕たちの歳にお父様たちが年増な女を選ぶわけがないだろ」

△「はぁ?剣を振り回す脳筋の兄さんより勉強出来るんですけど。ま、まぁそうかぁ…」

☆「気になるのか?」

△「いや、僕には必要無いな」

―ルイランが部屋へ戻って行くー

☆「あ!ちょっと!待てって!」

☆「...にしても、あの女もかわいそうだな。」

☆(N)聖女と言われている女の子はどう見ても自分たちより若い。
この時、僕の心に何かが引っかかった。
胸がぎゅっと苦しくて、今にも息が止まりそうな感覚がした。
このとき、僕は聖女に一目惚れをしているなんて思いもしなかった。

―ルイランの部屋ー

△「あーめんどくさい。なにが結婚だよ...」

―一時考えるー

△「ん?待てよ?こんなことを聞いたことがあるな。王族専用の図書館でも王座に就かなければ入れない場所があると...もしかしたらそこには、僕が知らない医学書が沢山あるかもしれない。」

△「よし...」

-ルイランはアランの元へと向かうー

☆「ふっ!はっ!んーなんか違うな...ここはこう...」

△「兄さんここに居た。探したぞ。」

☆「ん?ルイランじゃないか。何のようだ?」

△「兄さんさ、聖女との結婚はまだ考えてないよな?」

☆「ん...まぁ今はな。なぜそんなこと聞くんだ?」

△「じゃあ僕が聖女と結婚しても問題ないな?」

☆「は?急だな...まだ先のことだぞ?今すぐには決めれるわけがない」

△「兄さんさっき剣の稽古が忙しいからそんな暇はないって言っていたじゃないか。」

☆「そういうお前も医学の勉強で忙しいんじゃなかったのか?」

△「兄さんと違って容量がいいから大丈夫」

☆「だとしてもまだ早...」

△「(かぶせるように)じゃ、早速お父様に行ってくる」

☆「あ!まてって!」

―ルイランがお父様に結婚すると報告をしに行くー

△(N)僕は兄さんを無視して、一人お父様のところへ行き、聖女と結婚することを伝えた。お父様からは二人で決めたことか?と聞かれたが、「はい」っと嘘をついた。

△(N)そこへ兄さんが息を荒げて走ってきた。

☆「待ってください!お父様!」

△「兄さん?なぜここへ?」

☆「はぁはぁ...なぜってお前を止めに来たんだよ。」

△「僕を止めに?兄様も聖女と結婚したいの?」

☆「そうじゃない。」

△「じゃあ、僕と聖女が結婚するでいいじゃないか!」

☆「いったん冷静になれって。」

△「僕はいつも冷静だよ。兄さんと違って。」

☆「いいや、今のお前は冷静じゃない。なにをそんなに焦っているのだ?何を企んでいる」

△「何も企んでないって言ってるだろ!」

―二人はお父様に怒られるー

☆「あっ...こんな見苦しいところをお見せしてすいません。ほら!お前も謝れ」

△「すみませんでした」

△(N)僕は兄さんに言われて渋々謝った。そして、兄さんに来い!と手を引かれ連れてかれた。

△「痛いよ兄さん!ねぇ!兄さんってば!その馬鹿力で腕がとれそうだよ。」

☆「お前、勝手すぎないか?」

△「なにが?勝手なのは兄さんの方だろう?」

☆「は?お前は何を言って...」

△「僕はお父様に聖女と結婚する報告をしていたのに。兄さんがいきなり入ってきたから」

☆「だから、それが自分勝手だって言ってるんだよ!まだわからないのか!」

△「僕はただお父様に...」

☆「僕はお前が聖女と結婚することに了承していないだろ?お前はなぜ焦っている」

△「焦ってはいない。ただ兄さんに聖女をとられたく無いからだ」

☆「とられ...そういうことだ?とるって、そんな聖女を一人占めにしようとしていないぞ」

△「.....」

☆「どっちかというと、とる行為をしようとしているのはお前じゃないか?」

△「ち...違う!僕はそんなことしようとしていない!」

☆「お、おい!まて!話はまだおわ...ってあいつ逃げ足だけは早いんだよな。」

△(N)数年後、俺は聖女と結婚した。兄さんと一悶着あったが兄さんは剣士の道に進み、親衛隊の隊長になっていた。戦争では兄さんは先頭に立ち、敵を圧倒していた。国民も兄さんの方をたたえていた。
ある日、兄さんが戦争から帰ってきたが、大けがを負ったと聞いて急いで兄さんの元へ駆けつけた。

△「兄さん!兄さん...どうしてこんなことに...」

△(N)兄さんと一緒にいた親衛隊の一人から、戦争の前線で戦っていた時に森から現れた魔獣に襲われ兄さんが親衛隊の一人をかばい重傷を負ったと聞いた。

△「何やってんだよ....ほらこれ飲んで!」

☆「ゴクゴク...プハア~!はぁはぁ...」

△「ん?ねた?ったくもう。そこの者、運ぶのを手伝ってくれ」

☆(N)俺が目覚めた時には数日が経過していた。

☆「ん...ここはどこだ?」

△「あ、やっと目を覚ました。ここは、兄さんの部屋だよ」

☆「俺の部屋?確か戦争に行って森から現れた魔獣から仲間を守ろうとして...」

△「兄さんひどい怪我だったんだぞ?ま、俺が作った薬品なら簡単に治せるけどな。感謝しろよ?」

☆「あぁ...ありがとう...」

△「全治7ヶ月ってとこかな。完治するまで剣の稽古とかしたらだめだからな」

☆「はぁ?まじかよ....」

△「当たり前だろ?激しい運動して傷悪化したら誰が面倒見るんだよ。俺はごめんだね。忙しい。」

☆「....わかったよ。おとなしくしてるよ。」

△「じゃ、俺は仕事がまだあるから行くね。」

☆「おう!ありがとな」

△(N)アランの部屋を出た後、ほっと一息吐いた後、急いで仕事へ戻った。

☆(N)俺は怪我が完治するまで自分の部屋でおとなしくしていた。何ヶ月かが過ぎ、ある程度傷も治ってきていた。歩ける程度まで動けるようになり、じっとできず城内を歩いていたとき、聖女に声をかけられた。
その日から、城内を歩いているときは何度も俺のに声をかけてきて、ある日からは俺の部屋にまで来るようになった。

☆(N)ある日、城内を歩いているとルイランと聖女が人気の無いところに行くのを見かけ、気になり後をつけてみた。
二人が急に止まり慌てて物陰に隠れて二人の話を聞いていた。

☆「何を話してんだ?」

☆(N)いくら二人の会話に耳を傾けても何も聞こえ無かった。
突然、聖女がルイランに向かって刃物を付きだし刺したのだ。
驚いた俺は

☆「おい!何をやってる!」

☆ (N)と大声をだした。その声に驚いたのか聖女が逃げようとしていたのを見たが、追いかけず、倒れているルイランに駆け寄った。

☆「おい!おい!誰か居ないか!おい、ルイランしっかりしろ!おい。。。。」

△「……ウッ、うるさい…兄さんの声が頭に響く」

☆「あ、あぁごめん…そんなことよりどうしてこんなことに?」

△「…俺が聖女と結婚するって話になった時、本当は聖女はお前に選ばれたかったそうだ。」

☆「え?俺…と。どういうことだ...」

△「兄さんが、城内を歩いた時、良く声をかけられていたんじゃないか?」

☆「ああ...そういえば俺にしつこく話かけて来てたな。ウザかったから無視してたけど」

△「ああ。無視されたぁって俺に文句を言いに来てたよ。」

☆「そんなことで何でお前が刺されなきゃいけないんだ」

△「俺は聖女から反感を受けたらしい。ははっ…自業自得だ。」

☆「反感?自業自得?何故だ。お前が聖女から反感を受ける筋合いはないだろ?だって俺が聖女を無視したのが気に障ったんだろ?」

△「ちがう…俺は、自分の欲のために聖女と結婚した。聖女が好きとかでは無い。愛のない結婚をしたんだ。聖女にとって結婚は愛のあるものが良かったと知った。聖女には悪い事をした。こうなるのも自業自得。仕方の無い事なんだ。」

☆「愛のない…結婚」

△「相手のことも考えないで、自分の利益だけを考えて気づけば....」

☆「もうしゃべるな。出血量が多すぎる。今すぐ治療班が来るから。」

△「そういえば、聖女には子どもが腹にいたな。俺はもうだめだ。後は任せた、兄さん。」

☆「任せたって。お前の子だろ?お前が育てないでどうする!」

△「すまん兄さん。最後まで迷惑をかける。国は任せた....」

☆「おい....おい!!」

☆(N)ルイランは俺にそう言い残し、事切れた。それと同時に空から沢山の水が落ちてきた。俺はおもはず大声で泣いた。泣いて、泣いて泣いて、沢山泣いて、頬が雨で濡れているのか、涙で濡れているのかわからなかった。

☆(N)数年後、、、俺は王の座についた。聖女を暗殺の罪で死刑にしようとしたが、子を身ごもっている人を殺せないと思い、子を産むまで生かして居たが、ある日、子を身ごもったまま聖女自ら身投げしていた。
ある日俺は、ルイランが過ごしていた部屋へ来ていた。そこには沢山の書物が積まれていた。
ルイランが書いたと思われる医学書も沢山あった。その医学書を医療班に渡した。
今では、その本は生かされているそうだ。よかったな、ルイラン。

ルイランの残した医学書は誰かのためになっている。今日もどこかで...

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