【11/24限定企画#私と編み物】初めて作ったセーター
昭和50年代
高一の校内陸上競技大会は
終わりに近づいていた。
何気なく見たゴール付近
かがんで何かを拾っていた男性が
体を起こした。
夕方手前の光の中に、立ち上がった彼の姿に
私の目は、釘付けになった。
180センチはあるだろう。
細身でモデルの様なシルエット。
私は、彼の事が、忘れられなくなってしまった。顔も見ていないのに
恋に恋する16歳
「あの場所にいた背の高い彼」しかない情報から
名探偵コナンよろしく
女友達が、あらゆる情報を調べてくれた。
一学年上、ラグビー部、身長185センチ
まつ毛濃し。彼女は、いないみたい。
次に恋する女子がした事は
彼の姿を大っぴらに見れるのは
休み時間。
出待ちならぬ
いわゆるトイレ待ちをした。(今だとストーカー?)
ただ、毎回、彼が行くとは限らないのに
一階違いの廊下に、女友達が付き合ってくれた。
今から思ったら、感謝である。
好きというより、ファンに近い。
言葉を交わすなんて、とんでもない話。
とんでもないついでに
私が、思いついたのは、彼にプレゼントする「セーター」を編む事だった。
彼女でもない年下女子からの
思いを込めたセーターなんて
今思えば
怖い(笑)
押し付けがましい。
今なら絶対しない。
でも、40数年前、手編みセーターは、意外にメジャーだったとも言える。
母に作ってもらい、着ていた記憶がある。
編み機なる物がある家もあった。
「編む」と決めて
その高校に進学するきっかけになった
憧れの従姉に相談し、強引に教えてもらった。
彼のサイズは
もちろん、わからない。
クラスの同じくらいのサイズの、気さくな男子が協力してくれた。
(先輩への想いバレバレ)
マフラーくらいの腕しかない私だったが
その後セーターは
何とか
無事に渡せる代物程度には出来上がった。
受け取ってもらえた記憶がある。
イマドキなら写真で撮るのだろうが
残念ながら、もちろんない。
その後
セーターのお礼だったのか
彼と映画に行き
食事をした事を覚えている。
そして、家に帰って大泣きしたのも
覚えている。
デート?の日
まともに話すのは
その日が、初めてだったから
感動的な映画のはずなのに
初めて、近くで見る事が出来た彼の顔を
ちらちら見ていた事しか覚えていない。
おまけに食事のときに
まさかのナポリタンを頼んでしまった。
ナポリタン!
初デートの瞬間に
最も選んではいけないと思われる。
メニューの一番上に書いてたのかもしれない。
緊張しっぱなしなのだから。
何を話したのか
覚えてもいない。
ナポリタンを、どうやって、こぼさずに食べるか
で頭がいっぱいだったはず。
せっかく先輩との2人きりの時間だったのに
それを注文してしまった事
たぶん、会話も弾まなかった事
あり過ぎる後悔に
帰宅後、16歳の私は泣いた。
初めて作ったセーターの記憶は
あまりにも幼い無鉄砲な私の
甘酸っぱい過去を連れて来てくれるのだ。
アレルギーっ子が主人公の絵本を出版し、それを全国の園児や低学年のお友達に読み聞かせをしたいという夢があります。頂いたサポートは、それに使わせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。