1999年10月5日(火)
【戦士鍛錬場②:高嶋 美樹・坂上 直弥】
「それでは本日から2次試験の実技開始です。スケジュール表に従って各自模擬戦を繰り返してください。大丈夫だとは思いますが、何か疑問等あれば私か、坂上に質問お願いします」
模擬試験用のコスチュームと剣を持って話を聞いている戦士受験者に対して高嶋 美樹が試験開始の挨拶を行い、それを聞いた受験者達はそれぞれに意を決した表情を浮かべ、模擬戦を行う場所へと移動を開始した。ここは戦士鍛錬場②。本日は21期2次試験の2日目であり、実際の実技試験が行われる。30名の戦士希望者達は全員集合しており、2人ずつの15ペアに分かれて、それぞれ模擬戦を行う場所で待機をしている。これから15分の模擬戦を5分の休憩を挟んで8戦行うこととなるのだ。そして模擬戦で獲得したポイントは随時電光掲示板に表示されるので、現在の自分のランキングはすぐにわかるようになっている。
「それでは1戦目を開始してください」
この高嶋の声に合わせて模擬戦開始の合図が鍛錬場に響き渡る。これに合わせて、戦士希望者達は実際に模擬戦を開始した。教官である高嶋と坂上 直弥は模擬戦を行っている受験者達を一人一人確認しながら鍛錬場内を彷徨いている。模擬戦の結果はポイントで表示されるとはいえ、点数に現れない特殊技能や、才能のかけらなどは実際に見て回らないとわからないのである。一通り全員を見回った2人は、鍛錬場の入り口がわの全体が見渡せる場所に戻ってくる。
「無事開始しましたね。後は結果がどうなるかです」
「ぱっと見だとびっくりするほどの動きをする人はいないわね。まあ試験期間中じっくりと品定めしましょう」
少しホッとした表情で坂上が声をかけてきたので、高嶋は今軽く確認した受験者達の評価を述べる。まだ始まったばかりであり、もの凄い実力を持った受験者がいてもおかしくない。それを期待しながら試験監督を行うことになるのだ。
「そういえば坂上くんは8期で断トツの首位合格だったよね。思い出した」
「俺ですら忘れていたことを覚えてましたか」
目の前で模擬戦を行っている受験者を見ながら、自分の入隊試験のことを思い出していた高嶋は、その流れで坂上が入隊した時のことを思い出す。8期は戦士のレベルが高く、その中で坂上は試験を1位通過してきたのである。
「だから期待して、いきなり模擬戦お願いしたら大したことなかった記憶がある」
「いや、敵うわけないですよ。1期違うんだから」
思い出したように漏らした高嶋の言葉を聞いて、坂上は笑いながら突っ込みを入れる。入隊期の1期差は半年であり、その半年間に1つ上の期は毎日の鍛錬と迷宮探索を実際に行っているのである。試験に合格したばかりの新米がどれだけ実力が高ろうと敵うわけはないのである。ちなみに、歴代の戦士の中にはこの事象に当てはまらない異常な実力を持っていた戦士もいるにはいる。3期生として入隊した町田 康祐がこれに該当するのであった。