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1999年10月28日(木)
【僧侶鍛錬場:宮崎 藍・田上 沙由美・藤枝 美華】
「沙由美ちゃんの部隊はもうすぐ地下2階に降りるのかな?」
「いや、まだもう少しかかりそうです」
鍛錬中にかけられた宮崎 藍からの質問に対して、田上 沙由美は正直に返事を返した。ここは僧侶鍛錬場。本日もたくさんの僧侶が鍛錬を行っている。宮崎は姉で戦士の宮崎 桃と一緒に朝早くから鍛錬場を訪れており、淡々と自身の鍛錬を行っていた。すると程なく弟子である田上と藤枝 美華がやってきたので、いろいろ指導をしつつ鍛錬を行っていたのである。田上が所属する私歌が好き部隊は、現在第3迷宮地下1階を探索中であり、ボスであるモグラチャレンジを行っている最中である。戦士3人がモグラをクリアすれば地下2階に降りることになるが、田上の見立てではまだ地下2階に降りるのには時間がかかりそうである。第1迷宮も第3迷宮も地下2階から特殊な能力を持っている亜獣が出現し、呪文を唱えたり、毒攻撃を仕掛けてきたりする。また、罠の解除失敗により、毒を喰らうこともあるので、地下2階からは毒に対する対策をきちんと考えておかなければならない。1番簡単なのは毒消しの注射を常備しておくことだが、意外と高価であるし、かさばるので持ち運びが面倒である。そこで僧侶の能力であり現在田上が鍛錬を行っている緑色の光球を発現させることができれば、迷宮内で毒の中和ができるようになるのである。
「じゃあもう少し大丈夫そうね」
「でも早く出来るに越したことはないです」
安心して漏らした宮崎の言葉を聞いて、田上は真面目な表情で返事を返す。戦士のモグラチャレンジがいつ終わるかわからないので、それよりも先に緑球を発現させておくことを自分なりの目標にしているのだ。
「緑球なんて私、感覚的にも全然わからない」
「美華ちゃんには緑球はまだ早いわよ。とりあえず白と紫からね」
現在手のひらに浮かべた無色の光球を見つめながら藤枝 美華が発した言葉を聞いて、宮崎は少し笑いながら現在の状況を説明し、指示を与えたのであった。