1998年5月27日(水)

【戦士鍛錬場:中尾 智史・井上 貴志】
「じゃあ今日はこれぐらいにしておこうか」
「はい、ありがとうございました」
 模擬戦を終えることを告げた中尾 智史の言葉を聞いて、全身汗だくの井上 貴志は礼を述べるとともに、丁寧にお辞儀をした。ここは午後の戦士鍛錬場。数人の戦士が鍛錬を行っている。通常中尾は自分の鍛錬を午前中に行うのだが、井上のたっての願いで午後の時間を利用して模擬戦に付き合ってあげた。井上は礼儀正しく、剣に対しての姿勢も一途であり、中尾は井上を結構気に入っている。
「やっぱり僕ぐらいのレベルじゃまだまだなんですね」
 タオルで汗を拭きながら、井上が尋ねた。中尾は多少息を乱しているが、そんなに汗はかいていない。
「井上君はまだ冒険者になりたてだからね。通用しちゃったらこっちが困る」
 笑顔を浮かべながら中尾がこう口にする。
「でもなかなかいいセンスしていると思うよ。スタイルもほぼ確定しているから、後は実践を積めばどんどん強くなるよ。楽しみだな」
 そう話した後、中尾はシャワールームへと足を運んだ。

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