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1998年10月29日(木)

【熊大第3迷宮:絶対運命黙示録部隊】
「罠解除できました」
 5分程度罠と格闘していた飯島 志保がこのように言葉を発した後、振り返って笑顔を浮かべた。ここは熊大第3迷宮地下1階。絶対運命黙示録部隊は、奥に地下2階に降りる階段があるであろう扉の罠解除に訪れ、たった今飯島が解除に成功したのである。それを見て部隊の全員がサムズアップで祝福を表し、飯島も返事を返す。
「あ、奥に亜獣はいないです」
 返事を返しつつ追加情報を飯島が口にしたので、井上 貴志が指示を行い、栗原 慎が扉を蹴破った。扉の奥は通路になっており、すぐ先の行き止まりに地下2階に降りる階段が存在している。
「じゃあ降りますか」
 井上が言葉を発し、まず戦士の栗原と松 美由紀に視線を向ける。それに対して無言で首を縦に動かし同意の意思を示す。また、後衛の飯島と中村 瞬、島津 亮二にも視線を向けたが、後衛の3人もやる気満々のようだ。これを見て井上は先頭で地下2階の階段を降りていく。階段を降りると初めて見る地下2階の空間が広がる。見た感じはあまり地下1階と変わることはないが、空気の重さは少し重く感じる。
「何かズンと来ますね」
「変な感じがするな」
 空気の重さは空間に存在する特殊物質の濃度と思われるので、特に魔法系の中村と島津はその変化を強力に感じているようだ。
「ではちょっと探索します」
 こう口にして井上が西の方角へと進む。階段を降りた場所は多少広い部屋のようになっており、西側と南側に扉が存在している。そのうちの西側の扉から探索を開始することにしたのだ。
「扉の奥には亜獣いません」
 扉を確認した飯島の声を聞いて栗原が扉を蹴破る。扉の奥は左右に通路になっており、左はまっすぐと通路が伸びており、右はすぐに突き当たりで正面に扉がある。まずは右側を探索することにし、右側に進んで飯島が扉を確認すると奥に5体の亜獣がいるようである。
「では地下2階初戦闘だ。準備はいいよな」
 この井上の言葉に対して全員が同意し、栗原が扉を蹴破る。扉の奥には見慣れたアラビア風の戦士が2体と、初めて見る4本脚の謎の亜獣が3体存在していた。
「消滅」
「催眠」
 謎の亜獣に対して中村が消滅、島津が催眠を唱える。消滅の呪文は効果を発揮しなかったが、催眠の呪文により2体が崩れ落ちた。
「戦士2人を頼む」
 こう叫んで井上は謎の亜獣に向かい、栗原と松はアラビア戦士との戦闘を開始する。流石に地下2階であり、謎の亜獣もアラビア戦士も地下1階で出現する通常亜獣よりは強力であったが、地下1階のボスであるモグラと比べると闘いやすいことは否定できず、軽いダメージを喰らう程度で倒すことに成功し、眠っている2体も殲滅した。
「物質回収します。お疲れでしたー」
 飯島が物質回収を始め、戦士の3人は順番に中村から回復を行ってもらう。飯島が物質を回収しながらこの場所の造りを確認すると、ここは一般的な広さの部屋の作りになっており、特に扉等は存在していない。と言うことはここは行き止まりになっているということだ。この後、回収と回復を終え、この部屋から退出すると、前方から亜獣が近づいてきた。その亜獣はアラビアの盗賊と、また同じ謎の亜獣であった。この亜獣達も特に苦戦することなく殲滅したが、初めての地下2階探索で多少疲労感を感じたので、本日はここで探索を終了することにし、迷宮の出口へと向かった。

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