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2025年2月5日(水)《GB》

《そういえば新熊さんが失踪してから結構たったなあ。理由は闇の中。真相解明はもう少し先です》
【道:高山 学・工藤 清次・竹内 舞衣子・石井 稜・藤井 穂奈美・中尾 静馬】
「では地下2階クリアを目指してカンパーイ」
「カンパーイ」
 機嫌良く発した高山 学の乾杯の声を聞いた後で、メンバー全員も乾杯と叫び、グラスをぶつけ合った。ここは居酒屋『道』。本日は平日であり、店内は若干落ち着いた雰囲気である。本日午前中は迷宮探索を行った秀知院学園生徒会部隊であるが、満を持してチャレンジした地下2階のボスである変わったヘルメットをかぶった男との戦闘に勝利し、地下2階をクリアしたのである。これで次回から地下3階探索に入るのだが、この部隊は今月末で引退することを決めているので、地下3階が最後の探索場所になると予想される。
「静馬にはお世話になったな」
「いえいえ、こちらこそ勉強になりました」
 ヘルプとして入ってもらっている感謝を述べた工藤 清次の言葉に中尾 静馬は遠慮がちに返事を返す。元々この部隊の魔術師は新熊 芽衣奈であり、昨年の9月に失踪して以来、行方がわからなくなっている。そしてそれ以降はヘルプとして黒髪アッカーマン部隊の中尾が探索に参加していたのだ。アッカーマン部隊のメインメンバーは60期なので、中尾もそのように見られているが、実は入隊期は64期であり、秀知院学園部隊の63期よりも後に入隊しているのである。
「中尾くんもこれで楽になるねー」
「そうですね。探索が週1に戻ります。ちょっと寂しいかもですが」
 笑顔を浮かべて藤井 穂奈美がかけてきた言葉に中尾も軽い笑顔で返事を返す。冒険者の探索日は基本的に週1回と決められており、この規定の例外は他の部隊のヘルプに入る時だけである。なので冒険者が週に2回の探索を行うことはほとんどなく、現在絶賛例外発動中の中尾も3月からは週1回の探索に戻るのである。
「それにしても中尾くんって64期なのに良く60期と一緒に探索できるわね」
「魔法の習得スピードも異常だし、理由がわからない」
 素朴な疑問について竹内 舞衣子が質問し、それに石井 稜が補足の情報を付け加える。これを聞いた中尾はどう回答するかを考え始めた。確かに64期の同期と比べると異常に魔法習得が早いことは間違いない。60期のメンバーと一緒に探索を行うために人一倍の努力を行ったことも確かである。いろいろ考えた挙句、1番しっくりくる言葉を選んだ。
「天才ですから」
「ちょっとイラッときた」
 自信満々に回答した中尾の表情を見て、隣に座っている藤井が思わず言葉を漏らしたのであった。

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