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1996年10月18日(金)《BN》
【魔術師鍛錬場:翁長 祐紀・小山内 文太・葛西 英臣・本村 妙恵・勝呂 朋未・本田 仁・松島 明日香・大田黒 佳美】
「すげえ」
「どうなってんのこれ」
目の前で起こった現象に対して小山田 文太と翁長 祐紀が思わず感嘆の言葉を漏らした。ここは魔術師鍛錬場。本日もたくさんの魔術師が鍛錬を行っている。15期魔術師のメンバーも朝からきちんと集合し、大田黒 佳美からの指導を受けている。探索初期に必要となる呪文として催眠があるが、これは迷宮内物質の濃度を薄くすることにより、亜獣を昏倒させるものである。そしてこれを鍛錬場で実施すると鍛錬場内の特殊物質に歪みが生じるのだ。この歪みの有無によって催眠の習得進度がわかるのであるが、この歪みについては15期の魔術師たちにはまだ見ることができない。現段階では実際に空間に歪みができたかどうかを判断するのは教官の大田黒 佳美ということになる。そして現状15期魔術師の誰も空間の歪みを発生させることはできていない。ただ実際にこの鍛錬を始めてからまだ4日目なのでそんなに焦る必要もないのである。ところで鍛錬場では現在3期から15期のメンバーが合同で鍛錬を行っており、古参のメンバーは強力な呪文の練習などを行っている。TNT爆発を筆頭に大吹雪、大爆発など見たこともない現象があちらこちらで起こっているのである。このことについて15期のメンバーたちは非常に気になっており、これが鍛錬の集中に影響を及ぼしているように感じられる。そこで大田黒は一旦今後習得できるであろう呪文の現象を見せておこうと考えて、別の場所で鍛錬を行っていた本田 仁と松島 明日香を呼んできたのである。この要請に快く応じた2人は15期のメンバーに挨拶した後で、順番に呪文を唱えてみせた。催眠、火の玉から始まり、爆発、大爆発、そしてTNT爆発までを松島が詠唱し、そしてまだ松島が唱えることが出来ないティリオスを本田が詠唱したのである。
「松島さん、本田くんありがとう」
一通りの呪文を詠唱し、大田黒 佳美から礼を受けた本田と松島は自分たちの鍛錬場所へと戻っていった。
「さてみなさん。先程の2人が現在の魔術師の最高峰となりまして、今後はあの2人を目指して鍛錬を行ってもらうことになります」
軽い笑顔を浮かべて大田黒が15期の魔術師たちを激励する。冒険者になった以上は向上心を持って頑張ろうと心に決めていたが、実際に目の前で起こされた化け物じみた現象を見て、少し心が折れかかっている15期メンバーたちであった。