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1999年11月4日(木)
【魔術師鍛錬場:若本 尚人・松沢 大志・宮崎 信乃】
「これは」
「これは大吹雪じゃな」
自分が発現させた現象が吹雪よりも僅かであるが効果が大きいと感じた若本 尚人が漏らした言葉を聞いて、松沢 大志が突っ込みを入れた。ここは午前中の魔術師鍛錬場。本日もたくさんの魔術師が鍛錬を行っている。17期の魔術師である若本と松沢、宮崎 信乃は本日も朝から一緒に鍛錬を行っており、最近は吹雪の上位呪文である大吹雪の習得を目指して日々鍛錬を行っている。そして先程若本が唱えた呪文が、いつもの吹雪の現象とは異なっており、おそらくそれは大吹雪だったと考えられるのである。
「おー、尚人くんおめー」
それに気づいた宮崎が右手を挙げながら近づいてきたので、それに若本はハイタッチを返す。続けて松沢ともハイタッチを行った。
「また先を越されたか」
「17期のエースだもんね」
少し残念そうに言葉を漏らした松沢の肩を軽く叩きながら宮崎が慰める。17期の魔術師はすでに2名が引退しているので現在3名が残っている。初めの5名の段階でも若本の能力は上位であり、能力発現などは他のメンバーよりも明らかに早く成功させてきたのである。おそらく潜在能力の違いなどが理由になるのであるが、そこは言っても仕方がないことだ。だが、そこに理由を落ち着けるのは何となく納得したくない松沢と宮崎は、若本の能力の高さを年が1歳若いことを理由にしている。だが、もちろん年齢が若い方が能力発現に有利に働くなどということはないのである。
「でもいつもほとんど差がないですよ」
確かに新しい呪文などはいつも自分が発現に成功させているが、その後の松沢と宮崎の成功までにそこまで時期が開かないのも確かである。なので実際にそこまでの能力差を感じていない若本の言葉に納得し、鍛錬を再開するのであった。ちなみに冒頭のこれは〜じゃなという構文は、魔術師鍛錬場で“これは”という言葉を使うと、どこからともなく本田 仁がやってきて“これは〜じゃな。連れて行け”と意味がよくわからない言葉を発して去っていくことがたびたび行われるので、他のメンバーも何となく使うようになったものである。