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1998年8月27日(木)

【六花:本田 仁・大塚 仁・菅野 芳江】
「本田くん、大塚くん。今日は来てくれてありがとう。乾杯」
 満面の笑顔を浮かべて、菅野 芳江が赤ワインのグラスを上に上げた。ここは熊本アークホテルの中にあるレストラン『六花』。静かな雰囲気の店内で、オシャレな方々が上品に料理を楽しんでいる。本日熊本市民会館で“劇団K-TOWN”の演劇が行われた。この劇団は以前冒険者だった町田 康祐が団長として指揮をとり、今や人気劇団としてある程度有名になっているのである。菅野はこの劇団に所属しつつ、タレント活動も行なっているので結構有名人であり、店内で気付いた客が少し驚いた表情を浮かべたり、軽く頭を下げたりしている。ただ、流石にオシャレなレストランなので握手やサイン、写真などを頼まれることは今のところない。
「いやー、演劇とか全然見に行かないけどすごく面白かったよ」
 冷たいビールを口に流した後で、大塚 仁がこのように口にする。大塚に限らず、冒険者の中に演劇に興味がある人は少ない。隣でビールを飲んでいる本田 仁もそうであるし、そもそも話題になることもないのだ。
「それは良かった。地元だから少し緊張したけど、出来には満足してる。康祐はもっとやれたはずとか言ってたけど」
 軽く微笑みながら菅野がこのように話をする。菅野と本田、大塚は冒険者としては3期生の同期である。部隊は別だったが、3期の中では実力上位の2部隊として認識されていた。また本田は同じ魔術師なので、同期でもあり一緒に鍛錬する時間も長かったのだ。
「それにしてもまだ2人は冒険者続けてるんだね。もう引退して5年以上経つかな。何か懐かしいな」
 こう口にしながら菅野は昔を思い出す。あの頃は町田をリーダーに仲良し5人組で部隊を組んでいたのだ。そして引退する際に一旦は全員演劇を始めたが、今も演劇を続けているのは町田と菅野だけなので、他のメンバーとは離れ離れになっている。
「ところで劇団名が気になったんだけど、町田って以外とジモティーやったんやね」
 1品目の料理が運ばれて来て、それが目の前に置かれた後本田がこのように言葉を発した。劇団名は“K-TOWN”であり、熊本のKと街のTOWNから取ったものだと考えられたからだ。
「あ、それ良く言われる。熊本の街でK-TOWNって付けたってやつよね。でもそれ後付けだよ」
 運ばれて来た料理を見て嬉しそうな表情を浮かべながら菅野がこう話し、一口料理を口にした後、笑顔を浮かべて話を続けた。
「K-TOWNのKって康祐のKでTOWNは町田の町なんだよ」
「まじか!」
 予想外のことに大塚と本田は思わず同じ言葉を叫ぶ。ただ、大塚の叫びが2テンポほど早かったというのは言うまでもないことであろう。

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