1998年6月5日(金)
【罠解除士鍛錬場:森下 翼・宮本 紳・前島 瑠衣】
「新迷宮が出来たとはいえ俺らには関係ないからね。今いちやる気が起きんな」
休憩での水分補給中に宮本 紳が現状について言葉を漏らす。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。先ほどまで3人は罠解除装置を使って鍛錬を行っており、レベル8を全員がクリア出来ない状況である。新しく第3迷宮が発見され、冒険者組織内でも話題になっているが、自分たちは入れないのである。
「確かに意味はないかも知れんな。あるとすれば俺たちが探索できる新しい迷宮が発見されるぐらいかな」
まだ第1迷宮の9階探索レベルなので、まだ第2迷宮挑戦も果たしていない。ただ、第2迷宮の探索が終了している黒髪てへトリオ部隊がただただ第2迷宮の地下6階の探索を惰性で続けてるのを見ているので、第2迷宮の次の迷宮が現れないと先が見えている状況なのである。このことは言葉を発した森下 翼はもちろん認識しているし、前島 瑠衣も同じ気持ちであろう。
「でも私たちって今や若い罠解除士達の目標みたいなところもあるから、やる気を見せて鍛錬する姿を見せることも大事かもよ」
少し考えながら前島が言葉を漏らす。森下と宮本、前島は黄金期と言われる第13期の生き残りであり、森下と宮本に至っては、部隊そのものがそのまま存続している。
「目標と言われると少しやる気が出るな。若い衆が俺を目標にしてるのか」
何やら宮本が変な笑顔を浮かべ始めたので、森下と前島は休憩を終えて、罠解除装置へと向かった。ちなみに13期試験の際に、試験管であった富田 剛は森下と宮本の才能を見抜いており、2人を伏龍鳳雛と評価していた。森下は伏龍の文字通り、すぐに才能を開花させたが、宮本は富田の診断ではいまだに鳳雛のままである。
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