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1996年10月2日(水)《BN》

【罠解除士鍛錬場②:山口 可奈】
「それでは本日から実技試験を開始いたします」
 10名の受験者を集めて山口 可奈が試験内容の説明を開始した。ここは罠解除士鍛錬場②。本日から実技試験が開始され、受験者が全員参加している状況である。まだ詳しい試験内容等は話をしていないので、受験者たちは今から何をするのかわかっていない状況だ。
「試験内容は非常にシンプルです。この鍛錬場の特殊空間は、一般的な空間では不可能なことが実現できるようになっています。例えば」
 ここまで話をした山口は人差し指を伸ばした状態で右手を前方に動かす。そしてその右手に受験者全員が視線を向けたタイミングで指先に光を灯して見せたのである。
「おおー」
 何やら意味がわからず、冒険者たちはどよめきの声を上げる。しばらくざわつきが続いたので、少し時間を空けてから山口は言葉を続ける。
「今の現象ができるようになってもらいます。今日含めて6日間の期間がありますので、期間中には成功させてください」
 何をどうすれば出来るのかを全く理解できていない状況で、出来るようになれと言われた受験者たちは再度どよめき始める。そのどよめきが少し面白くなった山口は笑顔を浮かべて説明を続ける。
「ちなみに僧侶と魔術師の試験内容もこれと同じになります。別に競うわけではないですが、僧侶や魔術師よりも早いペースで出来るようになるのを期待します」
 相変わらず状況を理解できていない受験者たちは一応わかったような表情を浮かべるが、実際は良くわかってないと思われる。そして最後にもう1点だけ言いたいことを伝えることにする。
「最後に出来るようになる目安なのですが、もちろん最低ラインとして試験期間中ということですが、早ければ早いに越したことは有りません。ちなみに今までの期で高い実力を持っている冒険者達は初日で成功しています。そして今までの最速は鍛錬開始から30分となっているので、最速を目指したい人はこれを目安にしてください。では鍛錬を開始しましょう」
 話したいことを全て話した山口は、鍛錬の開始を全員に告げる。ただ告げられた受験者たちは何をどうすれば良いのかが全くわからず、とりあえず人差し指を立てて指先の部分を見つめ、そこに光が発現するイメージで集中を行うのであった。ちなみに本日罠解除士で課題をクリアした者はおらず、僧侶と魔術師にも本日成功者はいなかったのであった。

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