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1998年6月23日(火)

【熊大第1迷宮:華撃団Ⅲ部隊】
「前方から亜獣4体。やばそうです」
 亜獣の存在に気づいた前島 瑠衣が声を上げ、部隊の全員が移動をやめ、警戒を始める。ここは熊大第1迷宮地下9階。華撃団Ⅲ部隊は本日もまずボスの部屋の罠解除がまだ出来ないことを確認した後、地下9階を探索している。数回亜獣と戦い、ある程度奥まった場所を移動していると前島がこのように叫んだのである。
「皆んな戦闘準備。集中」
 隊長の島田 笠音が亜獣が向かってくる方向に一歩前進し、両手剣を構える。その両脇を倉本 憲伸と高倉 蘭馬が固めた。亜獣は前方を左に曲がった通路から近づいて来ているようであり、もうすぐ姿が見える位置まで近づいて来ている。
「姿がみえたら全力で行きます」
 島田の言葉で部隊に緊張が走る。すると前方左手から亜獣が現れ、こちらに向かってくる。
「やばい。突っ込む」
 姿が見えた瞬間に島田は前方に走り出し、倉本と高倉もそれに続く。
「無効」
「TNT爆発」
 太田 香澄が無効、佐村 亜香里がTNT爆発を唱えたが、この亜獣はある程度の魔法耐性があるので、二人の魔法は効果を発揮しなかった。
「ひょっとこの口はー」
 そう言いながら片手で口を塞いでいる4体のひょっとこがこちらに向かってくる。もう片方の手には剣を握っており、こちらの戦士の初撃を防いだ。3体の戦士が3体のひょっとこに攻撃を行ったので、残り1体のひょっとこがフリーになっており、口を隠していた手のひらを開き、呪文が発動する。それは大爆発と同じ威力の魔法のようで、部隊の全員がダメージを喰らう。
「とりあえず瑠衣と亜香里回復するね」
 ダメージを喰らったので佐村と前島の回復を行い、その後で太田は自分のダメージも回復した。この後戦士の回復の準備で精神を集中する。ひょっとこは魔法抵抗力は高いが、近接戦闘力はそこまで高くなく、戦士の攻撃で何とか殲滅することに成功する。その際に、口を隠している手のひらを開くこともなかったので、呪文も発動しなかった。
「びびったねー。物質回収します」
 そう言って前島が物質の回収を始める。戦士3人はダメージを喰らったので太田に回復を依頼した。その後、回復と回収を終え、本日は探索を終了し、戻ることにした。ちなみにこのひょっとこは2種類いるそうで、口が右に曲がっているものと左に曲がっているという違いがあるそうだ。ただ右に曲がっているひょっとこは非常にレアらしく、ほとんど遭遇することはない。先程の4体も左に曲がっているひょっとこだ。違いは発動する魔法の威力でひだりにまがっているひょっとこが大爆発程度、右に曲がっているひょっとこはTNT爆発程度の威力があるとのことだ。願わくば口が右に曲がったひょっとことには出会いたくないものである。

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