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1997年2月5日(水)《BN》
【戦士鍛錬場:小高 園香・田部 輝雄・鴨志田 利典・住田 照幸・大神 和臣・安宅 伽奈】
「え、何で?」
「いや、もういいかなって」
驚いた表情を浮かべて発した住田 照幸の言葉に小高 園香が軽く返事を返した。ここは午前中の戦士鍛錬場。本日もたくさんの戦士が鍛錬を行っている。傷つくことも怖くはないさ部隊と信じ合う仲間がそばにいるから部隊の戦士たちは朝から一緒に鍛錬を行っており、先程まで模擬戦を行っていた住田と小高は休憩に入っている。そしてこのタイミングで小高が話した内容に住田が愕然としたのである。2月末は冒険者たちにとって引退シーズンであり、主に大学を卒業するメンバーが引退することが多い。1回生時に冒険者になったと仮定すれば、今回この条件に当てはまるのは8期と9期のメンバーとなり、実際引退が決まった部隊がいくつか存在している。それとは別の理由で引退する部隊も存在し、今回11期の傷つくことも怖くなはいさ部隊も引退することを決めているのである。
「だってまあ冒険者をずっと続けるわけにもいかないからね」
「確かにそうではあるけどね」
端的でわかりやすい理由を述べた小高に対して、住田も意見については賛同する。大学を卒業している期となると7期以前となるが、実際に7期以前の冒険者はほぼ残っていないのである。
「1期の人もいるけど、あの人たちは特殊だからね」
「いつまで続けるのか見届けたい気がしないこともない」
最古参の1期でまだ冒険者を続けている前田 法重と原田 公司のことについて小高が言葉にし、この2人の今後について気になっていることを住田が口にする。2人が所属する黒髪てへトリオ部隊は第1迷宮、第2迷宮をすでにクリアし、今は鏡の間なる場所で亜獣を狩るだけの作業になっているらしい。それを飽きずに続けているところを見ると、引退のタイミングをすでに逸している感もあるので、いつまで冒険者を続けるのかということに対して興味が湧かないこともないのだ。
「だから部隊名ゴメンね」
「そうなんだよね。でもまあ仕方がない」
すまなそうな表情で発した小高の言葉に、軽くため息をつきながら住田が返事を返す。この2つの部隊名は繋がっており、勇者警察ジェイデッカーのオープニングから引用しているのである。2つ並べると何となく気づくひともいるかもしれないが、後半だけだとちょっと意味が分かりにくい。たとえば競走馬で“マチカネシキソク”と“マイカネゼクウ”という馬がいるが、“マチカネシキソク”がいなければ“マチカネゼクウ”のゼクウが何を意味しているのかは全くわからないのと同じことである。
この後、同じ部隊のメンバーたちも模擬戦から戻ってきたので、しばらく休憩したのちに相手を変えて再度模擬戦へと向かうのであった。