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1998年6月12日(金)

【ハイライト:福永 菜月・宮本 紳】
「あまり気にすることないと思うよ。紳くんは紳くんの良さがあるんだから」
 隣に座って、赤ワインを手にした福永 菜月が笑顔を浮かべながら優しく言葉をかけた。ここはスナック『ハイライト』。金曜日ということもあり、仕事帰りのサラリーマンや、学生の団体で店内は盛り上がっている。今現在カウンターに並んで座って飲んでいる福永と宮本 紳の2人は、いつかは最強いつでも最強部隊であり、同じ部隊なのもあり以前から2人で飲むことが多い。今でこそ13期罠解除士3巨頭としてある程度の評価を受けている宮本だが、冒険者になりたての頃は、極度の人見知りで、それにより他人から誤解を受けることが多かった。福永はそんな宮本に対して母性をくすぐられてしまい、世話をやくようになったのである。宮本は訳あって同世代の人に対しては緊張感が出てしまい、なかなか打ち解けることができない。その点福永はルックスは自分より若く見えるが、実際の年齢は8つ上のお姉さんである。優しく接してくれるのもあり、宮本が唯一安心して本心を曝け出せる相手なのである。本日宮本が福永に相談しているのは、一応恋人である田邉 早記とのことについてである。先日田邉から告白され、とりあえず受け入れたが、今まで恋人がいたことがない宮本は、どの様に接して良いかが分からずにいるのだ。
「最近は少し自分に自信が持てる様になってきたけど、早記ちゃんに好かれるほどの自信はない」
 そういって、ウイスキーの水割りを一気に飲み干した宮本は大きく息を吐く。
「そっかそっか。とりあえずおかわり頼もうか。同じので良いよね」
 その声を聞いて宮本が頷いたので、ウイスキーの水割りと自分の赤ワインを一緒に注文した。
「私戦士だから田邉さんよく知らないんだよね。リリスかわいい部隊だったよね?戦士の中江ちゃんと中森ちゃんはよく知ってるから何かあったら私聞いてみるよ」
 何か役に立てないかと思い福永が発した言葉を聞いて、宮本は首を横に振った。気持ちは嬉しいが、自分で乗り越えないといけないとも思っているのだ。この後も、宮本が色々相談し、福永がそれに答える感じで時間が過ぎていく。
「あ、もうこんな時間だ。紳くん今日は帰ろうか」
「わかりました。すいません。お勘定」
 そう言って店員を呼んで会計をしてもらい、今日の会計は宮本が支払った。
「じゃあ紳くんご馳走様。気をつけて帰るんだよ」
 店を出て大きく背伸びをした福永が軽く手を振って笑顔で声をかけてきた。宮本は大きく息を吐きながらいつも最後にかける言葉を口にする。
「ところで菜月さんは何か浮いた話は」
 そこまで言ったタイミングでいつものように笑顔で左の頬を摘まれる。そして手を振りながら福永がすぐ近くにある自宅の方向に歩き出したので、宮本もタバコに火をつけて、熊大方面へとゆっくり歩き出した。

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