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1999年11月24日(水)

【熊大第1迷宮:サクラ大戦はすみれ押し部隊】
「亜獣5体、前方です」
「良し、初戦闘に集中!」
 亜獣の気配を察知した大脇 優人の言葉を聞いて、隊長の佐山 友也が大きな声で指示の声を上げた。ここは熊大第1迷宮。サクラ大戦はすみれ押し部隊は本日初めての迷宮探索を行っている。迷宮入り口にて集合し、全員で迷宮に足を踏み入れると、通常空間とは違う雰囲気と空気の重さを実感する。そして一般的な探索経路である北側の通路を移動し、右に曲がった通路の先から亜獣の気配を感じたのである。
「緊張するね」
「うん」
 部隊の後方から前方を見つめている僧侶の藤枝 未華と魔術師の江夏 麻吏がお互いに緊張していることを共有する。敵の姿が見えた瞬間に魔術師は催眠を唱える必要があり、この詠唱が少しでも遅れると戦闘状況に大きく影響するのである。また、僧侶は基本的に戦闘開始時の行動はないが、もし亜獣の種類が不死亜獣だった場合は、殲滅を唱えなければならない。ただ、亜獣に占める不死亜獣の割合は高くないので、殲滅を唱えないといけない可能性はかなり低いのが現実である。少しずつ亜獣が足を止めて集中している冒険者達に近づいてきており、ついにその姿を目視することができた。
「ヒャッハー、ここは通さねえぜー」
「催眠」
「殲滅」
 出現した亜獣は骸骨であり、地下1階に存在する唯一の不死亜獣である。出現と同時に唱えた殲滅の効果で骸骨の一体が消滅し、一体が逃走する。そして催眠の効果によって残った3体の内2体が催眠状態になり、床に倒れ伏した。
「お二方、グッジョブ!残り倒すぞ」
「了解!」
 残った1体の骸骨に向けて突進しながら、佐山が言葉を叫び、これに鹿野 光宏と野川 文枝が返事の声を叫びながら後に続いた。3体1になった骸骨は手に持った短剣を闇雲に振り回したが、それで敵うわけもなく、あっけなく倒されてしまう。そして眠っている2体も難なく消滅に成功した。
「初戦闘お疲れでした。物質回収します」
 戦闘終了と同時に大脇が物質回収に向かう。戦士3名はダメージを喰らわなかったので、後衛と合流し、息を整えながら回収の時間を待つことにした。
「こんなもんじゃないよね」
「こんなもんじゃないよ。油断禁物」
 思った以上に楽勝だった初戦についての感想をもらした野川に、鹿野も同意の言葉を述べる。迷宮内では何が起こるかわからないので油断が1番の敵なのである。この後しばらくして大脇が物質回収を終えたので、探索を継続する。そして2回ほど亜獣と遭遇、殲滅して本日の探索を終えることにしたのであった。

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