見出し画像

2024年10月9日(水)《GB》

《能力者は能力者を引き寄せるらしいです。そもそも黒髪自体が特殊な地域ですからね。必然かも》
【戦士試験場:秋野 康臣・三矢 義英】
「あれ?」
 お手洗いから戻ってきた三矢 義英は、ベンチに座って水分補給をしている秋野 康臣を見つめながら疑問の言葉を漏らした。ここは戦士試験場。本日は71期2次試験の5日目である。今日も朝から戦士受験者達は模擬戦を繰り返している。実技試験が始まってから丸3日経っており、ポイント差もかなり大きくなっている状況だ。現在ポイント掲示板の1位の場所に名前があるのが秋野であり、2位に三矢の名前が表示されている。秋野は現在まで模擬戦に全勝しており、三矢も秋野には敗北しているが、それ以外の模擬戦は全て勝利している。お互いに実力を認め合っているので、自然と仲が良くなっているのだ。
「どうした?」
 何か声が聞こえたので、秋野は聞き返してみる。すると三矢が口を開く。
「何か秋野の周りの空間が歪んで見える」
「え?」
 少し驚いた表情で秋野が言葉を発する。実は秋野は能力者であり、あるイメージを発現することが出来る。それは一般の人間には見ることができない物なので、普段は他人に気づかれることはない。また、このイメージを秋野は外に出したり、完全に体内に取り込んだり出来るが、油断をしている時にイメージが体から漏れ出している場合がある。それでも一般の人間には見えないので、指摘をされることはないのである。
「三矢ってさ、これ見えるんだっけ?」
 こう言って秋野は自分の持つイメージをはっきりと発現させてみる。すると三矢は驚いた表情で返事を返す。
「見えるけど、それなに?」
 目の前に出現したイメージを見ることが出来たが、それが何なのかをすぐには理解できなかったのである。
「牛だっけ?」
「ミノタウロスだよ。お前はノールか」
 イメージを見つめながら発した三矢の言葉に秋野は笑いながら突っ込みを返すのであった。ちなみにノールとは“俺は全てを【パリィ】する”という作品の主人公であり、強力なミノタウロスをパリィで倒したが、それをただの牛だと認識して、自分の実力を過小評価し続けるという人物なのである。

いいなと思ったら応援しよう!