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1997年2月6日(木)《BN》
【熊大迷宮:東方は赤く燃えている部隊】
「深澤、俺の名を言ってみろ」
出現したどさんぴんが発した言葉を聞いて、深澤 拓海は大きく息を吐いて両手剣を握る手に力を入れた。ここは熊大迷宮地下5階。東方は赤く燃えている部隊は本日も地下5階を訪れており、いつものように堀田 鈴華がボス部屋扉の罠解除を試してみる。いつも以上に時間をかけて頑張っているようだが、本日も難しいかと思っていた矢先に、解除が成功した旨の報告を受けたのである。これで本日からボス戦が行えるようになったので、滝沢 雅昭が扉を蹴破って中に侵入した。そしていつものようにカエルの彫像を動かすことでボスであるどさんぴんが出現したのである。
「拓海、油断するなよー」
「注意一秒怪我一生」
白熱したじゃんけんの末に2番手と3番手になった滝沢と冨澤 智樹が後方から応援する。そして後衛の3人は心配しながら戦闘開始の時間を待っているようだ。
「行くぞ」
こう言葉を発した深澤は少し姿勢を落としてどさんぴんに近づいていき、先制の1撃を喰らわせようと試みる。しかしどさんぴんはこの1撃を華麗に回避し、一瞬動きを止めた後で攻撃を仕掛けてくる。
「くっそ」
この攻撃を深澤は軽く喰らってしまいダメージを受ける。先程の一瞬の動作停止で戦いの流れが狂ってしまうのである。
「ウァハハハハ」
相手を馬鹿にするような態度で戦闘を継続しているどさんぴんに深澤の感情が揺さぶられる。だが、このことはあらかじめわかっていたことであり、対策も講じていた。もし初見でどさんぴんと戦うのであれば正常な感情では戦えなかったかもしれない。
「集中」
気持ちを落ち着けた後で再度集中力を上げて戦闘に専念する。ここで一度気持ちを落ち着けたことで、どさんぴんのイレギュラー的な動きにも体が反応できるようになっており、的確な攻撃でダメージを与え続けていく。
「おわりだと、バカめえ、これがきさまの地獄行きの旅の始まりだあ〜」
力尽きたどさんぴんはこのセリフを残した後で倒れ伏し、消滅していった。
「結構喰らったね。回復してもらいな。物質回収します」
すれ違いざまに物質回収に向かう堀田から声をかけられ、見た目にもかなりのダメージなのだと認識する。そこですぐさま真鍋 吉乃の場所まで移動して回復を依頼した。
「何かムカつく敵だね」
戦闘を眺めていた津野 汐美が述べた素直な感想を聞いて、全員がその認識に同意する。そしてこの後は回収と回復が終わるのを待って滝沢がどさんぴん戦を行い、その後で冨澤もどさんぴん戦を行った。ダメージ自体は真鍋によって回復しているが、疲労感はどうしようないので、今日はこれにて探索を終了することにして迷宮を後にしたのであった。