1999年9月20日(月)
【戦士鍛錬場:前田 法重・原田 公司・中尾 智史・桜庭 敦子・平山 裕美・布川 和人】
「別に何てことないかな」
「そうなんですね。さすがです」
質問に対して平然と返事を返した前田 法重の言葉を聞いて、桜庭 敦子は感嘆の言葉を漏らした。ここは午前中の戦士鍛錬場。本日もたくさんの戦士が鍛錬を行っている。湘南爆走隊部隊の桜庭、平山 裕美、布川 和人も朝から模擬戦や鍛錬を行っていたが、最近疑問に感じていることに関して黒髪てへトリオ部隊の先輩方に質問してみたのである。その疑問とは、湘爆部隊が第2迷宮をクリアしてから約3ヶ月が経過しており、すなわちこの3ヶ月の間は新しい探索などは全く行わずに、地下6階の鏡の間で出現する亜獣と戦うだけの状況になっている。鏡から出現する亜獣が生成するレア物質は非常に高価なので、お金を稼ぐだけであれば全く問題ないのだが、冒険者として新しい何かにチャレンジするという探究心を満たせるのかといえばそうではないのである。そこで、この状況をすでに3年以上続けているてへトリオ部隊の先輩たちはどう感じているのかを、この機会に尋ねてみたのだ。
「まあ気持ちが分からんでもないけど、ない物はないからね」
「第1迷宮の時よりはまだ楽しい気がする」
続けて前田が言葉を発して、原田がそれに感想を続ける。前田と原田が第1迷宮をクリアしたのは1993年であり、そこから第2迷宮が発見されるまでの約2年間は第1迷宮の地下10階を探索し続けている。地下10階に出現する亜獣は決まっており、クリアした時点で実力も上位になっているので、単に出てくる亜獣を打ちのめすだけの探索を行っていたのである。対して現在の鏡の間は、毎回違う亜獣が出現し、その実力もこちらのレベルに応じて上昇しているので、第1迷宮地下10階に比べたら今の方が全然ましなのである。
「そっか。私たちが第1迷宮クリアした時にはもう第2迷宮あったからね」
「確かに第1迷宮地下10階でずっと戦うのは厳しそう」
話を聞いて平山 裕美が納得し、それに布川 和人も感想を続けた。こう考えると現在の鏡の間での戦いは悪くない気もする。だがあくまで第1迷宮地下10階と比較してのことなので、なかなか納得することは出来ない3人なのであった。