1996年12月26日(木)《BN》
【戦士鍛錬場:前野 諭子・倉本 憲伸・高倉 蘭馬・雨宮 英利香・杉谷 勝之・塚越 実紗】
「良いんじゃないかな」
「良し、じゃあ進めていきますね」
話を聞いた前野 諭子が前向きな発言をしたので、倉本 憲伸は満足げな表情を浮かべて返事を返した。ここは午前中の戦士鍛錬場。本日もたくさんの戦士が鍛錬を行っている。この歌は星の道しるべ部隊とやっぱりサンデーサイレンス部隊のメンバーは朝から合同で鍛錬と模擬戦を行っており、現在は休憩タイム中である。その中で倉本が話をしたのは14期冒険者の結束を図る目的として、年末のカウントダウンイベントと初日の出、初詣などを一緒に行わないかという提案である。そしてそれを聞いた前野がその提案について賛同の意を示したのだ。
「えっと、私の意見だけで良いの?」
先程の提案はおそらく倉本と高倉 蘭馬の2人で考えた物であろう。それを実際に行動に移す判断材料として自分の意見だけではダメじゃないかと考えたのである。
「良いんじゃないですかね」
「ボスの意見には全員従いますよ」
「誰がボスやねん」
疑問に対して軽く返事を返した倉本の言葉に高倉が補足し、それを聞いた前野は瞬時に突っ込みを入れる。14期の序列として5つの部隊を実力順で並べると、前野が属するこの歌は部隊が1番目だと認識されている。なので、この部隊で隊長を張っている前野が14期のボスだと思われているのも仕方がないことかもしれない。だが本人はまったくそのような意識がなかったので、不本意に感じているのである。
「英利香は私をボスだとは思ってないよね」
周りの印象に少し不安な気持ちになった前野が雨宮 英利香に質問してみる。これを聞いた雨宮は特に考えることなく返事を返す。
「え、ボスがボスじゃないって言うんだったらボスじゃないんじゃない?」
「早口言葉みたいだ。言ってることは正しいけど」
何かボスボス言っているのを聞いて杉谷 勝之が笑いながら感想を述べる。どうもこの2人も前野のことをボスだと考えている様子である。
「実紗は大丈夫だよね」
ここにいるメンバーで最後の頼みの綱である塚越 実沙に聞いてみる。全員にボスだと思われているならば認めないわけにはいかないが、最後の頼みの綱に期待してみたのだ。
「えっと、私は諭子さんはボスじゃないと思ってますよ」
優しい表情を浮かべてこう口にした塚越を見て、前野は安心した気持ちで胸を撫で下ろす。
「大ボスです」
「わかった。始めるか」
にっこり笑いながら塚越が続けて発した言葉を聞いて、前野は大きくため息をついて鍛錬の再開を口にし、模擬戦場所へと移動するのであった。