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1999年9月23日(木)

【道:本田 仁・水井 華代・前田 雅美】
「あ、もう結構風強いですよ」
「本当だ。一応家まで送るわ」
 先に店を出た水井 華代の言葉を聞いて本田 仁はお釣りを財布に直しながら返事を返した。ここは22時を少し過ぎた居酒屋『道』。今日は秋分の日で祝日なことと、現在かなり勢力が大きいと言われている台風18号が接近していることより、本田達を最後に店内には客はいない状況になっている。本田と水井は本日も朝から一緒にスロットを打ちに行っており、水井の台が少し不調なこともあったので、19時ぐらいで遊戯をやめて黒髪に戻ってくる。そして夕食がてら少し飲もうかという話になり、『道』にやってきたのである。現在接近中の台風の影響で本日は客も少なかったので、カウンターではなくテーブル席に堂々と座る。すると今日はワンオペらしい前田 雅美がおしぼりを持ってやってきた。
「本田くん。いらっしゃい。水井さんも」
「あ、お世話になります」
 丁寧な挨拶に対して水井も返事を返し、ペコリと頭を下げる。それを見て笑顔を浮かべた後で、本田に声をかける。
「ごめんだけど、台風が来ているから今日は22時ぐらいで閉めようと思ってるの」
「あ、大丈夫っすよ。それまでには帰ります」
 済まなそうに前田に対して本田はサムズアップをしながら返事を返した。この後は注文した飲み物や食べ物が次々と運ばれてきて、2人で今日のスロット話を中心に盛り上がりながら時間が過ぎていく。そして22時ぐらいになったので、会計を済ませた後、店内を後にしたのである。
「台風大丈夫ですかね」
「うーん。何か1991年に来た19号レベルって話は聞くよね。となると結構な被害が出るかも」
 県道を歩きながら水井が台風について言葉を漏らし、それに本田が返事を返す。現在接近中の台風は中心気圧が950hpぐらいで、明日の朝には熊本に上陸するらしいのである。今はある程度風が強いものの雨は降っておらず、今から数時間の間に天気が急変するのが予想される。そうこうしているうちに家に着いたので、水井とはそこで別れて、本田は自宅へと歩いて帰ったのである。

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