1999年7月16日(金)
【罠解除士鍛錬場:辻井 冬美・田邉 早記・八田 宏紀】
「良し、成功した」
「冬美おめー」
罠解除装置のレベル6に成功した辻井 冬美が思わず言葉を漏らし、解除に成功したことに気づいた田邉 早記が祝福の言葉を述べた。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。17期の罠解除士である辻井、田邊、八田 宏紀の3人は本日朝から一緒に鍛錬を行っており、現在は罠解除装置を利用した鍛錬を行っている。先程までは全員レベル6の罠を解除することができなかったが、たった今辻井がそれに成功したのである。
「意外とそうでもなかった」
罠解除装置から歩いてきながら辻井が言葉を発する。これまでレベル1からレベル5までの罠を解除してきたが、そのレベルによって難易度の上がり方にはばらつきがある。あくまでも辻井の感想であるが、このレベル6の罠解除はレベル5と比較してそこまで難易度が厳しくなっているという感覚がしなかったのである。
「とはいえー」
「私らにはまだ無理っぽい」
軽く返事を返した八田の言葉の後で、田邉が罠解除装置に向かいながら感想を口にする。先程までの罠解除の感覚ではまだまだ解除ができそうになかったからである。
「頑張る」
軽く自分に言い聞かせて田邉は罠解除装置にレベル6の罠を出現させる。そして集中して解除作業を行ったが、解除することは出来なかった。
「まだ無理ですね」
残念な表情で歩いてくる田邉とすれ違って、次に八田が罠解除装置へと向かう。そして真剣な表情でレベル6を設定し、罠を出現させた。
「ソトマヨル!」
罠解除に失敗した八田はこのように叫びながら後方に吹っ飛ばされる。その吹っ飛ばされ方はまるで走り高跳びの背面跳びのようであり、そこから走り高跳びの世界記録保持者ソトマヨルの名前を叫んだのだと推測できる。ただ、ソトマヨル本人はソトマヨルと叫びながら背面跳びをすることはないと思われるので、この叫び方が正解と言えるかどうかは意見が分かれるところである。