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1999年12月6日(月)

【魔術師鍛錬場:細川 舞美・松谷 佑紀・江夏 麻吏】
「出来る気がしないです」
「そりゃ俺が出来ないんだからまだ出来ないよ」
 浮かべた光球を見つめながら江夏 麻吏が漏らした言葉を聞いて、松谷 佑紀が笑いながら返事を返した。ここは午前中の魔術師鍛錬場。本日もたくさんの魔術師が鍛錬を行っている。師匠の細川 舞美と一緒に朝から鍛錬を行っている松谷と江夏であるが、1期違うとはいえ現在同じ課題の鍛錬を行っている。それは光球を爆発させることであり、これはまだ20期の誰も成功できていない。江夏は21期なので出来るはずもないのである。
「松谷くんももう少しかかるわよ。早くても来年の1月末ぐらいじゃないかしら」
 一般的なスケジュールについて細川が説明する。呪文の習得のスピードは適正と相性にもよるが、基本的なスケジュールについてはマニュアルが存在している。それによると20期が爆発を習得するのは来年の2月で、21期は7月の予定となっている。なので、この2人がまだ爆発を発現できないのは当然のことであり、逆に出来たらびっくりする事案なのである。
「少し休憩しましょうか」
 軽く笑顔を浮かべながら細川が2人に提案し、一緒にベンチまで歩いて行く。そして水分補給などをしながら体力を回復させる。
「そういえば細川さん一つ質問しても良いですか?」
「何かしら、良いですよ」
 何気に声を上げた松谷の質問に対して細川が軽く返事を返す。この後で少し聞きづらそうに松谷が質問した。
「細川さんってその、彼氏さんとかいらっしゃるんですか?」
 これを聞いて細川は一瞬驚いたそうな表情を浮かべる。このようなことを松谷が気にしているとは思っていなかったからだ。
「えっと、そうですね。いると言えばいますよ」
「やっぱりそうですよね。お綺麗ですもんね」
 漠然とした返事を細川が返したが、その内容について松谷は納得して大きく息を吐く。もし彼氏がいなければどうするかについて考えてなかったが、いるのであれば無理に悩む必要もないのである。
「まあ、落ち込むなよ」
「うるせーよ。ガキ」
 笑いを堪えながら江夏が肩を叩いて来たので、松谷は大人気ない返事を返すのであった。

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