2024年9月7日(土)《GB》
《転勤って大変ですよね。独り身ならなんとでもなりますが、家族がいると・・・。単身赴任かな》
【道:桑野 絵梨花・山内 亜弓・伊達木 真理・木暮 有加利】
「え、それ本当ですか」
「本当。昨日通達があった」
驚きの表情を浮かべながら発した山内 亜弓の言葉に、桑野 絵梨花は冷静に返事を返した。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客で店内は大賑わいである。ここに記す必要もないが、黒髪てへトリオ部隊のメンバーもいつもの場所を占領し、人一倍盛り上がっているようだ。第71期の募集が昨日で締め切られ、4人は遅くまでデータの集計とそのデータをゼーレに提出するとこまでの業務をやり切った。いつもであればその後は募集業務終了を肴に一杯飲むのであるが、昨日は全員の予定が合わなかったので本日にリスケしたのである。そこで本日予定通り募集終了お疲れ様ということで、しばらくその話題を肴にお酒を飲み進めていた。そしてある程度時間が経ったあとで、桑野が自身の悩みを打ち明けたのである。
「10月1日は急ですよね」
「え、うちの組織いつもそんなだよ」
期日的なことについて伊達木 真理が言葉を漏らし、それに桑野は普通に返事を返した。今回桑野が受けた通達は10月1日から東京支部での業務になるということである。高校卒業して冒険者となり、冒険者を引退してからはずっと組織の職員をやっているが、転勤の話が出たのは今回が初めてである。
「で、どうするんですか」
心配そうな表情を浮かべて木暮 有加利が質問する。それを聞いて桑野は少し考えたあとで返事を返す。
「私1人なら東京でもどこでも行くんだけどね。お母さんの体調が悪いから1人で置いていけない」
現在桑野は母親と2人暮らしであり、その母親は近年体調を崩しがちになっている。通院など桑野が補助しないと行けない場合は多く、自分だけ東京に行くわけにはいかない。また、母親はこの黒髪地区を愛しており、一緒に東京に連れていくのも難しそうである。
「そうなると退職・・・かな」
この桑野の言葉を聞いて、3人は何とも言えない表情を浮かべる。もちろん冒険者組織職員として一緒に働きたいという気持ちもあるが、東京に転勤となれば、一緒に仕事は出来ない。であれば、退職してでも黒髪に残ってくれた方が何かと一緒にできることもあるかもしれないのだ。
「絵梨花さんが良いようにするのが良いと思います」
この話の最後を山内がしめる。そして少し雰囲気が暗くなったので、この後は伊達木がすべりまくる話を披露し、雰囲気を暗いから寒いにチェンジしたのであった。