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1999年7月31日(土)
【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「そういえば第3迷宮も地下4階探索に入ったそうですよ」
「そうか、意外と早いな」
絶対運命黙示録部隊が第3迷宮の地下4階探索を始めたことについて中尾 智史が口にし、それに前田 法重が感想を述べた。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客が訪れて、各テーブルで盛り上がりを見せている。前田と5人の小人たちも周りのテーブルに負けず劣らずの盛り上がりを見せ、等比級数的にアルコールを消費している。今週の火曜日に絶対運命黙示録部隊は地下4階の探索を開始しており、その話は冒険者組織内では既成事実となっている。だが、前田はあまり他の部隊の状況には興味がないので、基本はこの飲み会の場で中尾や原田 公司から情報を得るのが一般的だ。今回のこの話題も前田以外はもちろん既知であり、知らぬは前田だけという状況だったのである。
「去年の6月ぐらいから探索始めたはずなので、3階を約1年で進んだことになりますね」
探索進度について原田 公司が口にする。第3迷宮が発見されたのが昨年の5月であり、その時期に採用された18期生以降が探索を行っている。全く始めての迷宮探索だということを考えれば、このペースはなかなか速いのではないだろうか。
「よその部隊と市電は進むのが速いっていうからね」
「市電速いっすかね?」
子供の話ではないが、探索進度についても他の部隊が進むのが速く感じることを中島 一州が口にし、それに大塚 仁が突っ込みを入れる。速いものの例えとして市電をチョイスしたことに対して疑問の念が浮かんだのである。
「でもまあ地下4階って第1迷宮だとブルーリボンの部屋があったよね。あそこ結構中盤の山なので、第3迷宮もそうなるのかな」
「そういえば第1迷宮の暗黒空間のような場所はないみたいなので、今のところエレベーターないらしいです」
「えーそれ結構きついっすね」
第1迷宮の地下4階は大事なイベントが起こる場所であり、第3迷宮でも同様であれば、そのような部屋が存在するかもしれないということを前田が口にし、今のところエレベータらしき物が存在しないという第1迷宮のと造りの違いを中尾が説明する。そしてそれを聞いた大塚が思わず感想を口にした。もし第3迷宮も同様に地下10階まで存在するとしたならば、1階1階階段を降りて行くのは労力以外の何物でもないからだ。とはいえ自分たちではどうしようもないことも確かなので、エレベーターがあるといいねと軽く言葉を交わし、またアルコールを急激消費しながら別の話題で盛り上がったのである。