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2024年9月28日(土)《GB》

《72期試験が終わるまで桑野さん午前中は組織業務です。昼食を挟んで残り4時間が『AXIS』業務》
【道:桑野 絵梨花・山内 亜弓・伊達本 真理・木暮 有加利・三嶋 雪奈】
「桑野さん。今までお疲れ様でした。カンパーイ」
「月曜日までいるけどね」
 大きな声で乾杯と叫んだ山内 亜弓に対して、桑野 絵梨花は軽く突っ込みを入れた。ここは居酒屋『道』。土曜日ということもあり、たくさんの客が美味しいお酒を楽しんでいる。9月で冒険者組織を退職する桑野にとって来週の月曜日が最終出勤日になる。ただ、今後は目の前にあるゲーム&喫茶『AXIS』で働くことになっているので、黒髪地区からいなくなるわけではない。それもあるので、お別れ会とはいえ、あまり寂しい感じはしないというのが現実である。
「月曜日に戦士のみんなには私がいなくなることと、代わりに雪奈が教官になることは説明しようと思ってる」
「すいませんがお願いします。桑野さん」
 まだ戦士のメンバー達にはっきりとは退職することを伝えていないので、それを最終日の来週月曜日に伝える予定であることを桑野が口にし、それを聞いて三嶋 雪奈が言葉を発しながらペコリと頭を下げる。今回の人事異動によって三嶋が戦士教官になるのであるが、前業務の引き継ぎに時間がかかり、やっと本日黒髪に引っ越してこれたので、まだ組織本館に足を運べてもいないのである。ちなみに三嶋は木暮 有加利と同じ52期入隊であり、入隊した当時から桑野は戦士教官であった。教官として非常に尊敬しており、その後継職を自分が務めるということに非常にプレッシャーを感じている。しかも来月から72期試験が行われるのである。不安な気持ちは桑野にも吐露しており、試験の間は桑野も業務を手伝うことで調整は済んでいる。
「ところで今回から私はいないものと考えて欲しいし、有加利と雪奈は来たばっかりなんだから試験関係は亜弓がきちんとまとめるんだよ」
「わかってます。ぴえん」
 ここ数年は試験関連業務については桑野が中心に行って来たのだが、今後は教官では最古参になる山内が行わないといけない。それを理解はしているが、やはり桑野がいなくなる寂しさも相待って、辛い気持ちになってしまうのである。
「でもまあ、私も黒髪にはいるし、仕事もそこだし何かあったら相談に来なっせ」
 こう言って桑野はジョッキのビールを一気に開け、おかわりを注文する。そのタイミングで他の3人も2杯目を注文することにし、各々が自分のジョッキを飲み干したのであった。

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