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2000年1月20日(木)

【魔術師鍛錬場:若本 尚人・松沢 大志・宮嶋 信乃】
「これは・・・」
「これは消滅じゃな」
 目の前で起こった現象を見つめながら宮嶋 信乃が漏らした言葉に、若本 尚人がいち早く反応した。ここは午前中の魔術師鍛錬場。本日もたくさんの魔術師が鍛錬を行っている。17期生の若本と松沢 大志、宮嶋は朝から一緒に鍛錬を行っており、消滅の呪文の発現に向けて集中を行っていた。そして今、宮嶋が消滅の発現に成功したのである。
「宮嶋ちゃんおめー」
 笑顔を浮かべて松沢も祝福の声をあげ、宮嶋はそれにペコリと頭を下げることで返事を返した。
「さて、俺らも負けてられんな」
「カシオミニをかけて勝負だ」
 気合を入れ直した若本が言葉を発した後で集中を始め、それを聞いた松沢も勝負を宣言して集中に入った。先程の消滅の発現によって少し疲労感を感じた宮嶋は休憩するためにベンチに移動する。そしてベンチに座り、水分を補給した。
「ふう。ここでもこれだけ疲れるんだ」
 現在の体の疲労度を確認しながら宮嶋が言葉を漏らす。消滅の呪文は迷宮で使用するとかなりの魔力と体力を使用するらしく、覚えたばかりの頃に使用すると立っているのも辛いぐらいの疲労感を感じると聞いている。それもあり、この鍛錬場でもある程度の疲労感を感じるのである。
「とりあえずは安心かな」
 基本的なスケジュール通りに消滅を習得したことに対して宮嶋は安堵の気持ちになる。とりあえず自分の実力が平均以下ではないことが証明されるからだ。これであとはTNT爆発や瞬間移動などの最高位の魔法習得に向かうことになり、スケジュール的には8月辺りの見込みなので,しばらくは余裕がある。その様なことを考えていると、集中しすぎてかなり疲れた様子の若本と松沢がやってきてベンチに腰掛ける。その表情から消滅の発現には成功していない様であった。

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