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1999年9月30日(木)
【熊大第2迷宮:いつかは最強いつでも最強部隊】
「楽勝でしたね」
「運が良かったな」
笑顔を浮かべながら発した大河原 美沙の声を聞いて、藤井 淳紀は冷静に返事を返した。ここは熊大第2迷宮地下2階。いつかは最強いつでも最強部隊は本日地下2階のボスである変わったヘルメットをかぶった男との勝負を行い、見事に撃破に成功した。現在は宮本 紳が物質回収、戦士3人は鹿本 芽衣に回復を施してもらっている。この亜獣との戦いは戦闘開始時に戦士1名と後衛の1名以外の4名が体の自由を奪われる。そしてこの硬直状態を解除するには目に見えないもう1体の亜獣を倒す事が必要になる。体が動かなくても罠解除士の亜獣探知は行えるので、1番楽なのは戦士と魔術師の組み合わせで、透明な亜獣がいるらしき場所に魔術師がTNT爆発を打ち込む事である。まさに今回がその状況であり、早い段階で全員硬直が解け、総力戦でボスを倒す事ができたのであった。
「意外と楽に終わったからちょっと地下3階降りてみますか?」
物質回収から戻ってきた宮本が全員に声をかける。今日はこのボス戦を行うまでの間に、通常亜獣ともあまり遭遇していないので、まだ戦い足りない気持ちがしないでもない。
「俺はどっちでもいいっすよ」
「私もー」
戦士の前村 亮二と福永 菜月はまだまだ探索する余力があるようである。こうなるとおそらく後衛3人も大丈夫だと思われるので、藤井が結論を出す。
「ちょっと行ってみようか」
この言葉により、この後は地下3階に降りることが決定となる。全員の回復が終わるのを待ってここから移動を開始し、そしてほどなく階段を使って地下3階に降りたった。
「全然違う」
地下3階に充満する特殊物質の重さを感じた大河原が思わず言葉をもらす。この階は迷宮内の特殊物質が濃密であると言われており、特に魔術師は敏感にそれを感じる事ができる。この後は階段周辺をぶらつき、2回ほど亜獣と戦闘を行った後で本日の探索を終えることにした。ちなみにこの階の物質の濃密さは罠解除士の宮本も感じており、これは人によるのであるが、それが亜獣探知に良い影響を与える場合と悪い影響を与える場合がある。残念ながら宮本は後者であり、地下3階では非常に違和感を感じながら探索をしないといけないのであった。