1999年12月18日(土)
【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「時はまさに世紀末ですね」
「淀んだ街角で俺たちは出会いましたな」
今日も絶好調の原田 公司が発した言葉を聞いて、本田 仁がその歌詞の続きを口にした。ここは居酒屋『道』。土曜日ということもあり、店内は大盛況の雰囲気である。前田 法重とその舎弟たちもいつものように飲み会を開始し、すでにかなり出来上がっている状況である。今年もあと半月で終わろうとしており、来年は西暦が2000年の大台に乗ることになる。巷ではコンピューターの2000年問題が話題で、ここでも先程までその話題で盛り上がっていた。そしてその話題の後で2000年がいわゆる20世紀の最後の年、すなわち世紀末であるとの話から先程の原田の発言に繋がったのである。
「淀んだ街角って黒髪のことだったんですね」
納得の表情を浮かべて中尾 智史が言葉を漏らす。このメンバーは熊本大学起因で出会っているので、出会った場所が淀んだ街角という定義をするならば、淀んだ街角イコール黒髪という図式が成立するのである。
「たしかに腐敗と自由と暴力のまっただ中かも知れませんね」
「なぜ俺を見ながら言う?」
笑いながら大塚 仁が発した言葉を聞いて、前田が不満げな表情を浮かべて返事を返す。別に腐敗と自由と暴力が前田を意味するという意図はなかったが、たまたま前田を見ながら発言しただけであり、この大塚の言葉に深い意味は全くない。
「いやー、前田くんのせいで俺たちはどこもかしこも傷だらけだよ」
「何でですか、うずくまって泣いてても始まりませんよ」
ジョッキのビールを飲み干した後で中島 一州も追随する言葉を漏らして、それに前田は不当な扱いをされていることにため息をつきながら、突っ込みを返したのであった。