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2024年11月26日(火)《GB》

《今日の天気図は低気圧が縦に3つ並んでて黒い三連星みたいでした。ガイア、マッシュ、オルテガですな》
【冒険者組織南地区:富田 水無・有村 藤花・結城 香純・澤口 恭平・桑野 絵梨花】
「どうしたの藤花、具合でも悪い?」
「いや、大丈夫だ。少し考え事」
 隣を歩いている富田 水無に声をかけられた有村 藤花は正直に今の自分の状況を説明した。ここは冒険者組織南地区。本日熊本は結構強い雨が降っており、傘が必須の状況だ。午前中の探索を終えた富田と有村、結城 香純は冒険者組織の入り口で待ち合わせ、現在南地区内を傘を差して歩いている。結構な量の雨なので、天気起因で具合が悪くなる人もいそうであるが、今までに有村がそのようになったのは見たことがない。なので、少し元気がなく見えるのは天気のせいではなさそうである。しばらく歩くと県道337号線に出たので、そこを左に曲がり『AXIS』へと向かう。とりあえずランチを食べる予定にしている3人はほどなく『AXIS』に到着し、喫茶部の扉を開けて入店する。
「いらっしゃいませ」
 店に入ると今の時間は喫茶部を担当している桑野 絵梨花に声をかけられる。これに3人は笑顔で返して、店内を見渡すと同じ部隊のある隊員がこちらを見つめて手招きをしている。これに有村が大きくため息をついて3人はそのテーブルに向かい、椅子に座った。
「遅かったですね」
「君が早すぎるんだよ」
 結構早く来たらしく、コーヒーを1杯すでに飲み干している澤口 恭介がかけて来た言葉を聞いて、有村が淡々と返事を返す。おそらくいつものように有村が鍛錬後『AXIS』に行くという噂を聞きつけて先回りをしていたのだろう。その心意気を否定はしないが、ちょっと怖い気がしないでもない。
「ところで俺ウーム出せるようになりましたよ」
「そうなんだ、おめでとう」
 話したくて仕方がなかったことを澤口が口にし、それを聞いた結城が笑顔で祝福する。果たしておめでたいことなのかどうかの判断は難しいが、結城は素直な感想を述べたのであろう。この後は澤口のウーム話で結城と2人会話が盛り上がるが、そもそもウームが見えない富田は、一応話は聞きつつもスマホをいじり始め、有村はやはり何か元気がなさそうである。
「やっぱり藤花体調悪いんじゃない?何か上の空だよ」
 顔を見つめながら富田が声をかけてくる。元気がなく見えるのは体調のせいでは無いので、心配かけて申し訳ないという気持ちが湧く。そこで、その気持ちを伝えようとしたが、先程の富田の言葉の1部分が引っかかり、そちらが気になって仕方なくなってしまう。
「上の空ってさ」
 思っていたのとは違う反応を有村が見せたので、3人は黙って有村に視線を向ける。すると有村は考えながら話し始めた。
「意味わからないよね。だって空って上にあるんだよ。わざわざ上のっていらないよね」
 よく意味のわからないことを有村が熱弁しているが、とりあえずは突っ込まずに聞いてみることにする。
「たとえば北の北海道みたいなもんだよ。北海道は北にあるのが当たり前なんだよ」
 何となく言いたいことはわかるのだが、その場の雰囲気が微妙な空気になる。ちょうどそこに桑野がランチを持ってきた。
「ランチ持って来ました」
 こう言ってテーブルに次々とランチセットを配置していく。これを見つめながら澤口が言葉を漏らす。
「店員の桑野さんみたいなもんですかね」
「全然違うよ。ちゃぶ台ひっくり返すぞ」
 自分の発言が軽口だと認識はしていたが、有村の反応があまりにもきつかったので、この後澤口はしばらくしょんぼりするのであった。

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