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1999年6月17日(木)
【南地区レストラン:前村 亮二・宮本 紳・鹿本 芽衣・大河原 美沙】
「前村さんもそろそろ結婚とかいう話はないんですか?」
「ないなー。残念ながら。彼女すらいねえ」
普段から考えないでもなかった疑問について鹿本 芽衣が質問し、それに前村 亮二は軽く顔を左右に振りながら答えた。ここは『南地区レストラン』。ランチタイムでもあり、たくさんの冒険者や職員で賑わっている。本日は午前中第2迷宮の地下1階を探索したいつかは最強いつでも最強部隊であるが、探索終了後に藤井 淳紀と福永 菜月は何か用があるとのことで冒険者組織出口で別れる。そして残った4人はさしよりランチでも食べようかという話になり『南地区レストラン』へやってきたのである。詳しく聞きはしなかったが、藤井と福永の用事というのはおそらく結婚の準備に関連することであろうことは容易に想像できる。幸せそうなのは何よりなことであるが、この部隊で次の年長者は前村であり、現在27歳である。結婚をするにはまだ若いのかもしれないが、そもそも前村の女性関係の話は全く聞いたことがなく、普段疑問に思っていたので、この機会に質問してみたのである。
「前村さんモテそうですけどねー」
「そうなんだよね。モテそうだとは良く言われるんだよ」
正直な感想を大河原 美沙が言葉にし、それを聞いて前村は若干不思議そうな表情を浮かべて返事を返す。前村は非常に性格が明るく、見た目もイケメンである。モテない要素を探すほうが難しい人物なのであるが、実際はここしばらく彼女がいないのである。
「見抜かれてるんじゃないですかね」
みんなに聞こえるか聞こえないかの声で宮本 紳が言葉を漏らす。ただ、この言葉は3人には聞こえてなかったので、何か聞き返されるようなこともなかったのである。