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1999年4月23日(金)
【冒険者組織本館:大塚 仁・本田 仁・富田 さやか】
「もう20期なんだねえ」
「10の位が増えるとぐんと遠くなった気がする」
合格者発表の掲示板を見ながら本田 仁が言葉を漏らし、それに大塚 仁が返事を返した。ここは冒険者組織本館入り口前。本日は20期募集の1次審査の発表日となっている。入り口前の大きな掲示板には戦士30名、罠解除士、僧侶、魔術師それぞれ10名の受験番号が表示されており、先程から番号を確認しに何人かが訪れてきている。最近は募集者も多く、この1次試験を通過するだけでも結構大変なのであるが、1次試験の合格者の中でも最終的に合格するのはその半数となるので、やはり冒険者になるのは狭き門であると言わざるを得ない。
「じゃ飯食いに行こうか」
こう言って本田が歩き出したので、大塚はその後に続く。昼食はもともと『AXIS』で食べようと話をしていたので、とりあえず県道に向けて歩いていく。歩いていく間にも合格を確認しにいく受験者らしき人達とすれ違う。不安な表情の人もいれば、友人と一緒に楽観的に話をしている人もいる。毎年の風景ではあるが、何か昔を思い出し、気が引き締まる思いがしないこともない。県道に出ると『AXIS』がある左側に曲がり、そのまま歩道を進んでいく。そして『AXIS』に到着したので、扉を開けて中へと入った。
「いらっしゃいませー、あ、本田さんと大塚さん。お疲れ様です」
いつも元気な富田 さやかの声を聞いて何故か少し安心し、いつも座る席に座って、いつも頼む料理を注文したのである。