1998年6月15日(月)
【子飼:富田 剛・立石 啓二・菊川 小絵・嶋本 麗華・本田 仁】
「えー、このメンバーが集まるのも誕生日の時だけになってますが、まあ今日は俺の誕生日だから盛大に祝えばいいさ。かんぱーい」
「かんぱーい」
何故か自分の誕生日に自分で乾杯することになった本田 仁が盛大な乾杯の挨拶を行い、それを聞いて参加メンバーたちも笑顔でジョッキを上にあげた。ここは居酒屋『子飼』。月曜日ということもあり、店内は落ち着いた雰囲気となっている。本日は27回目の本田の誕生日であり、誕生会をいつものようにここ『子飼』で行っているのである。元々この誕生日会は立石 啓二と菊川 小絵、嶋本 麗華が4期生として冒険者になった時から始まっており、その時からメンバーが1人少なくはなったが、毎年順番に誕生日をここで祝っているのである。
「そういえば本田くんはまだ第2迷宮探索してるの?」
「まだと言われましても、他に探索するところもないので」
素朴な疑問を立石が投げかけ、それに本田が答える。前回会ったのが、2月の嶋本の誕生日であり、それから探索に何かの進展がないのかを確認したのである。第2迷宮自体は2年前に探索が完了しているので、現在本田の部隊が行っているのは、迷宮に入って亜獣を狩る作業のようなものなのだ。
「でも新しい迷宮見つかったんですよ」
それを聞いて立石と菊川、嶋本は興味深い表情を浮かべる。ただ、富田は知っているので気にせずビールをガンガン飲んでいる。
「第3迷宮って名前が付けられたんですけど、俺ら入れないんですよ」
そういって本田はジョッキのビールを開ける。そしておかわりのビールを頼んだ後、第3迷宮のシステムを説明し、3人はなんとも言えない表情を浮かべる。この後、本田が現在の冒険者事情をしばらく説明していたが、一区切りがついたので菊川が富田に尋ねる。
「そういえば、さやかちゃんと穂樽ちゃんは元気?」
「元気だよー。じゃなかったら飲みに来れんて」
そう言って富田は笑顔を浮かべる。この5人の中で唯一富田だけが結婚しており、子供もいるのだ。
「何か幸せそうでいいなー」
菊川と嶋本はそのように言葉を漏らしたが、この2人であれば、しようと思えばいつでも結婚ぐらい出来るだろうにと思わずにいられない富田であった。
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