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1999年2月23日(火)

【罠解除士鍛錬場:大塚 仁・沖本 蓮香】
「そんな罠があるとは聞いてなかったな」
 先程まで後輩の指導をしていた大塚 仁は、休憩中に沖本 蓮香に声をかけられて、質問に対してこのように答えた。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。昨日第2迷宮地下5階を探索し、扉の罠を解除できなかった沖本は、その事を大塚に相談したのである。現在湘南爆走隊よりも探索進度が進んでいるのは黒髪てへトリオ部隊だけなので、沖本が相談する相手は大塚1択になるのは当然のことである。ただ、実は大塚は第2迷宮をクリアはしているが、最後のボスに挑む直前で引退した富田 剛と交代で冒険者に復帰し、その後クリアしているので、第2迷宮の道中に関しての知識は富田から話に聞いている以上のことは知らないのである。
「そうなんですね」
 何かヒントが貰えるかと思っていた沖本は少しがっかりした表情を浮かべる。正直扉にかけられていた罠は解除の方法が全くわからなかったのである。
「でも手前に何もない部屋があるのはやっぱり怪しいと思うんだよね。多分何か仕掛けがあるはず。そしてその仕掛けをなんとかしないと扉の罠は外せないんじゃないかな」
 状況を聞いた大塚が自分なりの考えを説明する。沖本は現在罠解除士で大塚に次ぐNo.2の実力者であり、その沖本が全くわからないような罠が第2迷宮に存在するとは思えないのである。
「わかりました。来週の探索で部屋を徹底的に調べてみます。ありがとうございました」
 こう口にした後、沖本はぺこりと頭を下げて、その場を立ち去り、鍛錬を再開した。

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