1998年5月29日(金)
【熊大第2迷宮:黒髪てへトリオ部隊】
「それでは作動させますね~」
大塚 仁の合図と共に、全員が戦闘態勢に入った。ここは熊大第2迷宮地下6 階“鏡の間”。熊大第2迷宮はすでに6 階までの完全マップが完成しており、探索自体は完了しているという認識となっている。残す謎としてはこの鏡の間に存在する大きな扉だけなのであるが、この扉はそもそも扉なのかどうかも不明のままである。ただ、この部屋には壁沿いに大きな鏡がいくつも並んでおり、これがこの扉を開ける鍵ではないかと考えられている。そしてこの鏡というのが特殊で、罠解除士が鏡に手を当て念を発すると、その鏡の中からどうしたことか亜獣が発生してくるのである。これまでもこの鏡からは本当に様々な亜獣が発生してきた。歴史上の人物を模倣した亜獣、漫画、小説の登場人物を模倣した亜獣がその例である。なぜこの鏡からそのような亜獣が発生してくるのであろうか。この鏡の分析は長い間続けられてきているが、今だに原因は解明されていない。一番有力な説としては、その部屋に入っている冒険者達の真相意識の中から亜獣としてふさわしいと思われるものを鏡が具現化しているというものだが、それも眉唾ものである。
「何がでるかな?何が出るかな?」
本田 仁が軽く歌いながら亜獣の出現を待っていた。すると鏡の中から亜獣が現れてくる。亜獣は人型で4体いるみたいだ。
「何かえらく弱そうだな」
出現した亜獣を見て前田 法重が思わずつぶやいた。それを聞いて中島 一州と中尾 智史も怪訝な顔でうなずいている。亜獣は普通の人間っぽく、装備も粗末なもので、武器も簡単な棍棒程度なのだ。
「とりあえずお約束で聞いてみるか・・・名を名乗れ!!!!」
原田 公司がお約束の言葉を投げかける。すると4 体の亜獣は声をそろえてこう言った。
「オニキス目指してがんばりましょう!」
そういって亜獣は霧のように消えていった。全員があっけに取られ、しばしの沈黙が部屋を覆った。そして次の瞬間、一人を除く全員が同様の言葉を叫んだ。
「本田~」
「本田く~ん」
「本田さ~ん」
「俺っすか!?」
良くわからない原因の責任をかぶせられ納得いかない本田であった。